作成:2000・09・20


改訂 3

文章が多くて申し訳ありません。じっくり読まれる場合は、オフラインで読んで頂くと通信費節約になります。


はじめに

私は、「壊れたカメラ」をなんでもかんでも「ジャンク」というのには抵抗があるので、ここでは、なるべく「研究品」という意味深な言葉を使います。でも、どう考えても甦生できない場合はやっぱり「ジャンク」です。

幻覚なのかもしれませんが、私はSマウントレンズに、感性に頼って作たような温かみを感じるのです。もちろん、マウントアダプターを使えば新しいボディでもそれは堪能できるはずなのですが、何か調子がでません。特にSMCタクマーレンズ群の開放測光+自動露光の機能を生かした撮影を楽しむには、後にも先にもES/ESII しかないと思っています。
しかし、既に、ES/ESII は、10年以上前から純正の修理はできませんし、系列外のルートでも預かってくれるところはほとんどないようです。従って、趣味嗜好を同じくする方々のボディが暫時消滅してゆくことは残念でなりません。

昨年の夏ですが、衝動的に「研究品」のESII に手を出してしまいました。最初は、現在使用しているESII の部品を確保しておこうという意図でした。しかし、ミラーが戻らないという1台が届いてみると、それは、あまりにも美品だったので、部品取りにするのは惜しくなってしまいました。そこでもう1台、シャッターがだめというESII を譲って頂きましました。そしてさらに1台 ・・・ もう1台 ・・・。


部品取りや部屋飾りってこんな感じ?

私は、最初の2台のESII を相手に、行きつ戻りつ、無駄なこともしましたし、部品も破損しました。さらに、オート不良で露出計も不調ですが、最高に程度のよいESII を譲って頂き、さらに知見を深めました。
カメラという趣味に、撮影や機材のコレクションと同じように、修理あるいは修復という楽しみ方があることに気づきました。始めたばかりなので、先輩諸兄には笑止千万かもしれませんが、この経験を掲載し、故障したESII を抱えておられる方々の参考に供したいと考えました。

しかし、修理にトライすることを、みなさんにあえてお奨めはしません。分解するだけでも部品は痛みますし、部品を壊してさらに状況を悪くする可能性があります。それは、ご自分でなさったことなので誰も助けてくれませんし、責任はご自身に帰することになります。また、ジャンクを素人修理し、中古品を装って売っぱらうというようなことも、お奨めできません。

障害の状態把握

まず、これら4台の「研究品」がどのような状態なのかを点検し把握しました。

最初の1台は、ミラーが戻らないという障害はすぐに復旧したのですが、露出計はもっともな値を示すが、オート(自動露光)不良という、ES/ESII に多い障害を持っていることが判りました。
(1台目の点検結果の詳細 → ここにあります)

もう1台のほうは、自動露光は作動していますが、シャッター幕のダメージ等が大きく、部品の確保と構造を理解するための教材としてしか活用できませんでした。
(2台目の点検結果の詳細 → ここにあります)

3台目のほうは、オート不良で露出計の指示がずれているという障害をもっているというものでした。露出計の指示が異常というのもES/ESII に多い障害です。このふたつの障害の原因は別々という予断をもっていたので、最後まで、同じ主原因でこれらの障害が発生していることが判りませんでした。
(3台目の点検結果の詳細 → ここにあります)

4台は、ミラーが戻らないということでしたが、この軽故障の他には致命的な障害はありませんでした。
(4台目の点検結果の詳細 → ここにあります

成 果

以上のことから、ご紹介できることが三つあります。

ひとつは、トップカバーを外し、前板を外すまでのボディの開放手順です。みなさんが、不用意に開けようとして部品を破損させてしまうことを回避して頂きたいという目的でまとめました。ただし、ここから先は、分解の範疇です。回り止めのため赤ペイントされた調整個所を外すことになり、原則として調整しないと復旧できませんので掲載を控えます。
(ESII の開放手順 → ここにあります)

もう一つは、オート(自動露光)不良の原因究明の一例です。これは、構造の理解を深めつつ試行錯誤したもので、後からふり返るとずいぶん無駄なこともしたという反省です。オート不良の原因は、個々の事例で違うでしょうが、オート不良イコール修理不能という固定観念を改めるきっかけとして頂ければ幸いです。
(一台目のESII のオート不良原因の究明と対処例 → ここにあります)

さらに、オート不良と露出計ズレの原因究明の一例です。予断をもっていただけでなく、タカをくくって手をつけたので迷走したという反省です。機械部分は完璧なボディで、電子回路は合理化のための変更が進んだ新しいものです。このような易しそうな障害でも、安直に手を出すと、電子部品の総入れ替えにならざる得ないという教訓として頂ければ幸いです。
(三台目のESII のオート不良原因の事例と対処例 → ここにあります)

従って、前者と後者のオート不良は、露出計の指示値という相違もありますが、前者は電磁石が働かないため、シャッターは最速で(殆ど幕が開かずに)切れてしまいます。後者の場合は、メモリブロックの故障で、電流リークのためシャッター速度が早くなっているのであり、シャッターは、必ずしも最速とはなりません。

まとめ

1台目のESII はオリジナルの部品でも復旧は出来たのですが、より良い部品を2台目から移植しているので、ニコイチ(共食い)修理になってしまいましたが、結果としては上首尾でした。さらに、3台目のESII では、大部分の電子部品を部品取りにした2台目から移植し、修繕を完了しました。3台目で難儀した分、4台目はもの足りないほどでした。
こうして、さらに、知見を充実させることができました。今後、経験を積んで、「ESII のオート不良のトラブルシューティングと対応方法」をまとめることが出来たらば幸いです。
この企画を作るにあたってのお礼の言葉と反省を別のページにまとめております。
(謝辞と反省など → ここにあります)




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 作成日 : 2000・09・20.
 更新日 : 2003・02・19.