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ESII のオート不良原因の事例と対処例
1台目の場合


これは、このESII だけのオート不良事例で、類似の障害がかならずこのように対処できるものではありません。

 1.予習
   
ESおよび、ESII の自動露光の電磁石コンポーネントまわりをおさらいしておきます。

Automatic位置で電源スイッチが入ります。さらに、シャッター半押しでAND条件の電源スイッチが入ります。
フィルムを巻き上げて接点(タイミングスイッチ)が閉じられて、ミラーが上昇すると(初期のESIIではミラーの上昇の条件を得るスイッチはない)、基板内では、タイミングコンデンサの負極はアースに(+6V側)シャントされます。ソレノイドの駆動回路はONになり、電流が流れてソレノイドが励磁され後幕は固定されます。
次にシャッターが切られ先膜が走るとこの接点(タイミングスイッチ)が開き、それまで、アースから定電流回路に流れていた電流(露出に応じて変わる)は、タイミングコンデンサから供給されます。そして、コンデンサの負極は、時間とともに電圧が降下します。この電圧でコンパレータが反転し、ソレノイドを励磁していた回路が遮断され、ロックが解除されて後幕が走ります。
(以上は、私の独断的な理解であり、誤っているかもしれません)

[MEMO]
障害が基板側にあるのか、ボディ本体側にあるのかは、良品のボディと差し替えてみれば判ることですが、本体側の未知の異常に起因して、基板側を破損する可能性がない訳ではありません。安易な差し替えは危険でなので控えたほうが賢明です。
そこで、良品のボディ本体に問題の基板を装着して、確認する方法だと危険度が低いので、こちらで、ボディ側に問題があると判断しました。(詳細は省略しますが、事前にコンデンサの電圧変化やツェナダイオードの電圧などを当たってみて、あらかじめ基板は動作しているとあたりはつけて実施しました)

 2.オート不良要因の確認(その1)
   
底フタとトップカバーを外す程度で点検してみました
 確認内容 確認結果
(1) 巻き上げ、シャッター半押し、自動-マニュアル切替えなどの操作し、電池室の正負極間の抵抗値を当たり短絡の有無を確認。 特に、抵抗値が激減することはないので、短絡に関しては問題はないようです。(念のため、この時使用するテスタのリードの正負の表示と実際に印加される極性を確認しておきます)
(2) 基板を外してから、タイミングスイッチ接点の入り/切りが正常かを導通で確認。
フィルムを巻き上げると導通し、シャターを切ると遮断されるのでタイミングスイッチ接点は正常と判断されます。(実際には、トップカバーを外しスイッチの動作を見ながら、この確認をしました)
(3) 良品のボディ本体に問題の基板を装着して、正常に動くかを確認。
この方法だと危険度は低い。
露出の指示値そのものは多少疑問があるものの、指針の動きは正常です。意外にも、自動露光でスローシャッターも切れます。
よって、ボディ本体側に障害があるものと推定されます。
(4) 基板を元に戻して、シャッター半押しで電源スイッチが入り、ソレノイドが励磁され、ロックピンが動作するかを確認。 トップカバーを外して動作を見ましたが、よくわかりません。(前板を外しての確認から、励磁はされてもロックが効かないものと判ります)
その他の機械的な動きは問題ないようです。
(5) 基板を外して、電源スイッチ端子とソレノイド間の抵抗値を当たって断線を確認。
基板を外しソレノイドへ接続されているコネクタの端子とボディの抵抗を測定してみると331Ωであり、断線はしていません
 3.オート不良要因の確認(その2)
   
ここまで来たら、前板を外してみましょう。
 確認内容 確認結果
(1) 前板を外して、巻き上げて電磁石コンポーネントのロックピンを抑えてシャッターを切ってみて、後幕がとまるかを確認。
(これは手加減が難しく野蛮な行為です)
ロックピンを抑えてシャッターを切ると後幕は走りません。抑えている力を緩めると閉じます。機械的な部分は問題ないようです。
(2) ソレノイドに直接通電して、ソレノイドの励磁を確認する。
シャッターを切ってみる。
ソレノイドに通電すると励磁しますが、シャッターを切るとロックピンは後幕を止めることができません
(3) もう1台から取り出した良品の電磁石コンポーネントと交換して仮組みし、直接通電して、ロックピンが後幕を保持できる電流値を確認する。(修繕には直接関係ありません) 良品と問題のコンポーネントとをこのボディに仮付けして測定しました。良品のベスト値は6.6mAでも可でした。問題のあるほうは、そのままでは15mAでも不可でした。
(4) 取り外した問題の電磁石コンポーネントのソレノイドが励磁されてもなぜロックされないかの原因究明。(修繕には直接関係ありません) 問題のある電磁石コンポーネントは一言で云えばガタが来ていました。そもそも、組立てにも若干雑なところがあり、心をこめて作っていないものだったのでしょう。
 4.オート不良の対処
   ただのニコイチ(共食い)修理の自慢話にならないようにと己を叱咤激励したものの、もう疲れたなぁ。電磁石コン
   ポーネントを相手にしているより、とにかく良品と交換してしまうことにしよう。(家族の視線も冷たいし、そろ
   そろ限界)
対策内容 対策結果
(1)

良品の電磁石と交換し調整する。


左:セルフタイマ  右:電磁石

仮付けして測定したベスト値は6.6mAでしたが、電磁石コンポーネントの姿勢をどう調整しても、本番では、なかなか10mAを切れません。とりあえず、8.4mAで妥協しました。

問題のあるほうも、後で手入れすると10〜12mA程度になり使用できるようになりました。しかしながら、とんでもない手間を要しますし、たまたまというツキにも左右されす。15mA以上では使用は無理だと思います。やはり問題のあるものを良品に替えるのが確実です。
あとは、組み立てて電池を入れ、早々に4秒でも8秒でもスロシャーターが切れることを確認。やっぱり、ニコイチ修理に終わってしまいました。セルフタイマやシンクロ接点、露出値などを確認し外装を復旧すると、この障害の修繕は終わりです。

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作成日 : 2000・09・20.
更新日 : 2003・02・20.