作成:2021・01・03


お断り:恐縮ですが、個人的な感想と独断です。


2022・06・11.:スパーワイド-ヘリアー 15mm F4.5 ASPH の記載追加に伴い改定   



 3.3 フォクトレンダーレンズ
   1.ウルトラワイド-ヘリアー 12mm F5.6



ウルトラワイド-ヘリアー 12mm F5.6 ASPH と ベッサL
2000年9月にいずれも新品で求めました。
 
 初期型のウルトラワイド-ヘリアー(UWH) 12mm F5.6 ASPHは、2000年発売で、2010年にVMマウントのII 型に交代しています。レンズ構成は非球面レンズ1枚を含む8群10枚で、光学系の変更はないようです。絞り羽根枚数は9枚(奇数枚数)です。最短撮影距離は0.3mで、最大絞りは22です。本体は、径50.5x長38.2 mm、重量 162 gです。、

 UWH 12mm F5.6 のきついコントラストと周辺光量低下が強烈で、ベッサLでは露出決定が難しく、露出の当たり外れはあきらめていました。当然、α7RII でもベッサLと同様だと思っていましたが、ダイナミックレンジオプティマイザーの効果なのか、コントラストは、さほど強烈ではなく普通の調子の写真に近づきます。
 露出は、少しアンダーにすると、ベッサLの趣が少しだけ甦ります。必要に応じて水準器を表示できるので、撮影時に水平が気になるときには助かります。

 廉価なYIYOブランドのMマウント-L39マウントダプターを中間アダプターに使用ましたが、前のEL-NIKKOR 50mm用の特製中間アダプターからの借用です。VMマウント版のII 型ならLM-EA7でAF化するのには何もいりません。
 
 

ウルトラワイド-ヘリアー 12mm F5.6


ウルトラワイド-ヘリアー 12mm F5.6 試写


ピクセル等倍画像 (部分)
 
このレンズの発売時は、驚きの画角、高コントラストに喜びました。α7RII の画素数ではシャープネスは限界です。レンズ性能全般がよいため、描写はニュートラルですが、デジタルでは彩度が少し地味になることがあります。


α7RII での周辺光量は、フィルムよりも少し低下するようです。


2000年10月から掲載
 α7RII では、このレンズの深いと信じていた被写界深度の指標はけっこう大甘で、案外とピントはクリティカルなことを認識しました。また、LM-EA7を使ったAF撮影は、F5.6というレンズの明るさなので、屋外でも光量によってはたまにピントが迷うことがあります。また、ピクセル等倍に拡大すると、α7RII のピントの精度に疑問が生ずることがあます。今回は、AFでの撮影にこだわりましたが、状況に応じてMFに切り替えることが賢明かと思います。わずかですが倍率色収差があり、シャープネスもそろそろ限界であることが伺えます。
 とはいえ、20年前のフィルムカメラ用のレンズとしては必要にして十分なシャープネスを狙って設計していることが解ります。

 なお、α7II や初代のα7Rでは、広角レンズ使用時の周辺部の色かぶりが話題になりましたが、α7RII では裏面照射センサーにより改善されているようで、この古いウルトラワイド-ヘリアー 12mm F5.6でも発生しません。

 このUWH 12mm F5.6は、VMマウント化されたII 型、10群12枚構成で絞り羽根は10枚のIII 型と進化しますが、ヘリアー-ハイパーワイド 10mm F5.6に、最広角のお株を奪われてしまい、カタログからも降板しました。

 屋外でも半押しAFは、開放しか使えません。そもそもLM-EA7の繰り出し量が4.5mmもあるので、レンズのヘリコイドで加勢する必要はありません。

 


   2.スーパーワイド-ヘリアー 15mm F4.5
 


スパーワイド-ヘリアー 15mm F4.5とウルトラワイド-ヘリアー 12mm F5.6を大きなヘリアーと比較
 
 初期型のスパーワイド-ヘリアー(SWH) 15mm F4.5 ASPHは、1999年発売で、2009年にVMマウントのII 型に交代しています。レンズ構成は非球面レンズ1枚を含む6群8枚で、光学系の変更はないようです。絞り羽根枚数は10枚(偶数枚数)です。最短撮影距離は0.3mで、最大絞りは22です。本体は、径49.6x長30.7 mm、重量 105 gで、ぐい呑みサイズです。

 常々、UWH 12mm F5.6 ASPH 一つというのは寂しい気がして、SWH 15mm F4.5 ASPH なども欲しいなぁと思っていたのですが、ネットオークションで25000円散財してしまいました。ファインダーなしですが、ありがたくもノーブランドのMマウント-L39マウントダプター付きで、LM-EA7には助かります。外観は、それなりの使用感で、少々スレありとのことでしたが、気になるほどではありません。

 UWH 12mm F5.6 のレンズキャップ分が小さいので、SWH 15mm F4.5 は一回り小さいと錯覚します。いずれのレンズもLM-EA7にいきなり引き伸ばしレンズを付けたような格好になります。

 

スーパーワイド-ヘリアー 15mm F4.5



スパーワイド-ヘリアー 15mm F4.5 試写(クローズアップ)

 早速、試写してみます。描写はまったく評判通りです。倍率色収差は、α7RII の等倍ピクセル画像では滲む程度で気になりません。画像センサーの画素ピッチが、200%以上になるのには暫くかかると思います。大きなゴーストはなかなか発生しません。このような小さなレンズで、対角110°の広角画像が得られるのには驚きます。
 
 UWH 12mm F5.6 では、フィルムでも極端な周辺光量低下が気になりました。デジタルでは、周辺光量の低下が極端で、このSWH 15mm も同様です。レンズの演じる芸なのですが、強烈なパースと周辺光量の低下した写真ばかりだと飽きます。周辺光量低下は必要に応じて補正することも必要だと思います。
 
 
 ところで、LM-EA7の繰出し量は4.5mmですから、レンズが触れそうになるまで寄って開けて見ました 。。。周辺が流れて崩れそうになります。繰出し量が大きいからか、周辺光量はあまり落ちません。丸ボケも観察できます。とろけるようなボケという訳にはいきませんが、質感の描写も立派です。
 UWH 12mm F5.6 でも LM-EA7の繰出し量を活かした接写ができ、たいへんよく似た描写の写真になります。
 
 このように、近接補正されないレンズで極端な接写をすると、稀にコマ収差を見ることができます。普通は発生しません。

 

 このSWH 15mm F4.5 は、フィルムカメラ用途では、歪曲が極めて小さく、シャープで、F4.5でもコマ収差がでないと言われています。
 

中央部の描写(左)と コマ収差を発見(右)
ピクセル等倍画像 (部分)

 SWH 15mm F4.5では、屋外なら半押しAFはF11でも反応します。UWH 12mm F5.6 と違って、SWH 15mm F4.5 はMFで拡大してピント合わせをする必然性は感じませんでした。
 
 UWH 12mm F5.6、SWH 15mm F4.5いずれも、周辺光量を補正して好みの調子にしたくなると思います。α7RII では、彩度も少し地味になることがあるので、必要なら周辺光量を補正してから彩度を上げると良いでしょう。

 さらに、周辺光量の悩みに加え、α7RII でワイド-ヘリアーを使用した場合、JPG画像が、画面全体に青カブリなどが発生することが悩みです。これを、RGBヒストグラムを揃えることで、ホワイトバランスを改善させることを試み、改善効果を確認しました。

周辺光量とホワイトバランスに悩みつつ試写した結果 ここ [2022・07・03.追加] 

 このUWH 12mm F5.6は、フードを外してフィルタアダプターを付けて77mm径のフィルタが付けられますが、SWH 15mm F4.5 は、そんなことはできません。しかし、世の中には、何とかして67mm以上のフィルタを付ける人さえいるようです。
 UWH 12mm F5.6で撮影すると、周辺光量を補正に加えて倍率色収差の補正もしたくなります。SWH 15mm F4.5であれば、歪曲がほとんどなく、鮮明な写真が得られます。フィルタのこと以外、UWH 12mm F5.6とSWH 15mm F4.5の使い勝手は、断然、SWH 15mm F4.5が優ります。
 

 

このα7RII (FW Ver.4.00)とLM-EA7(FW Ver.6.0)での動作なので、記載内容が再現しない場合はご容赦ください。このレンズを取付ける中間アダプターは、YIYOとノーブランドの Mマウント-L39マウントダプターを使用しています。
 

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   更新日 : 2022・07・03.

 

 

    余 談

[メモ]
 α7Rで、ワイド-ヘリアーをMFで使うなら Close Focus Adapterというヘリコイド付きのアダプターもありますがますが、そもそも、探せばEマウント版のウルトラワイド-ヘリアー 12mm F5.6があります。
 なお、初期型の シグマ 12-24mm F4.5-5.6 EX DG HSMの周辺画質は超えています。現行のIII 型での改良が興味深いところです。

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[ひとり言]
 このYIYOブランドのアダプターを使った場合は、中心の指標が真上から15°ぐらいずれます。しかし、LM-EA7を含めた状態ではオーバーインフとなっているのでこのままとします。

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[ひとり言]

 DSLR用の広角(ズーム)レンズの画像と比較して、UWH 12mm F5.6や SWH 15mm F4.5で撮影した広角画像との違いは、極端な周辺光量低下です。個人的な感想ですが、JPEG撮って出しでは、これらのレンズの個性とはいえ、この広角画像は食傷気味になります。
 そこで、周辺光量を補正する画像ソフトです。周辺光量補正は大概のソフトで出来ますが、特徴や使い易さがあるので悩みます。
 SONY Imaging Edge Desktop の Edit では、周辺光量の補正は判り易い右のようなインジケータが表示されるので設定に迷いません。中心部と周辺部の強度(赤い線が)がスムーズにつながるようにすると自然な感じです。モニタを見ながらお好みに補正します 。。。ワガママを言えば、中心部と周辺部の強度はマイナスも設定できると嬉しいのですが。。。

 いずれにしろ、フラットな周辺光量を望むなら、魚眼画像を歪曲補正して得られる広角画像がベストと確信しています。
魚眼画像を歪曲補正するなら ここ
                                              [2022・06・11.追加]

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[ひとり言]
 フォクトレンダーレンズは、個性を楽しむ、趣味性の高いところが一般的なレンズとは違い、人気・需要が増えているそうです。古いL(L39)マウントなら安価かと思いきや、それなりに買取価格相場よりオークション相場は高めです。喜ばしいことではあります。
 
 世に公開されている作例写真では、UWH 12mm F5.6 とSWH 15mm F4.5 の周辺光量に関しては、III 型では少し改善されている気がします。ヘリアー-ハイパーワイド 10mm F5.6では、個人的にはなんとか許容できます。
 海外(中国)製サードパーティレンズです。LM-EA7で使うことを前提とした場合、MマウントのLAOWA 11mm F4.5 と14mm F4 が、妥当な周辺光量を望めそうです。ここは、資金を蓄えるのが賢明なようです。
                                              [2022・06・11.追加]

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