作成:2001・06・15

お断り:恐縮ですが、個人的な感想と独断です。


SMCタクマー 24mmF3.5 の思い出

 いつも中古カメラ屋さんを巡っては、人気のないSMCタクマーレンズでも、24mmともなるとそれなりの値段に躊躇して見送り続けていました。フード付きではなかったのですが、ネットオークションで譲って頂くことにしました。
 58mm径のフィルタサイズで、ちょっと大柄ですがESIIには程よい納まりです。今のところずっとESIIに付きっぱなしで、出かける時はいつも持って行きます。 Fズーム24〜50mmF4の出番がめっきり減りました。(このズームもF4の明るさとサイズはたいしたものですが)

 

 SMCタクマー 24mmF3.5 の印象

 一般には24mmF3.5は高コントラストで細かな描写をするレンズとして紹介されます。しかし、硬い絵柄の映える被写体を選んで絞り込んで撮影すればそうなのですが、本質的にはSMCタクマーレンズの広角レンズに共通するところがあります。
 ズームレンズのこってりした描写に慣れきっていたのでこの抜けの良さに感激しました。フレアやゴーストの発生も極小で、まだゴーストが写り込んだことはありません。開放でもコマ収差は確認できません。描写はボケが2線ボケになるので近接撮影などでは気をつける必要があります。このことから、ていねいに内面反射や収差を抑えてから、質感を損ねない程度に輪郭を強調していることが判ります。
 歪はあまり気になりませんし、周辺光量はけっこう豊かですが、絞りによっては四隅だけ暗くなることがあります。あまり84°という画角を意識しません。
 また、最短撮影距離は25cmと全く不満は感じませんが、ボケがきれいではないのでオマケの能力と理解しましょう。この時代に無理にF2.8にせずF3.5とした見識と、ていねいな設計は尊敬あるのみです。

 

 系譜

 SMCタクマー24mmF3.5は、68年9月に登場したSタクマー24mmF3.5を手直ししたSMCモデルです。そして、同じレンズ構成でKマウントに化粧直しされて、フィルタ径52mmの24mmF2.8の登場までの短期間ですがKレンズのラインナップを守りました。
 ちょっと大柄で、暗いこのレンズが、75年のKマウント化に耐えられる描写性能を持っていることは、使用してみれば納得です。ただし、Kマウントの24mmF3.5というのは、たいへん地味な存在でユーザーの購買意欲にアピールするところがなかったようで、中古カメラ屋さんでもあまり見かけません。

 その他

 24mmF3.5の角型フードはぜひ入手したいと思っていました。気長に捜すつもりでしたが、さっそくネットオークションで譲って頂きました。構造は同じですが28mmF3.5の角型フードより一回り大きくて迫力があります ・・・というか、迫力がありすぎて人前でこれを付けて撮影する心臓は私にはありません。レンズのほうもフレアやゴーストが出にくいので、フードいらずなのです。
 尚、Sタクマー当初のフードは、径77mmのフィルターにも使える20mmF4.5と同じタイプのものだったようです。



24mmF3.5  28mmF3.5  35mmF3.5 の角型フード装着状態


 SMCタクマーレンズの時代には設計に計算機が導入されていたそうですが、設計通りのレンズを作ると云うことに関しては、現在とは比べものにならないほど難しかったに違いありません。そのギャップを埋めていたのは、確かな感性に基づいた実写だったのではないでしょうか。
 その後は、計算機が進歩して、確かに優等生ばかりになりました。しかし、優等生の意外な欠点というのも、かえって我慢ならない時があります。



 

   

 更新日 :2004・11・08.
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