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ES II [Product No. 23117] |
1台目 |
入手の経緯 |
このきれいな外観のESII も、SMCタクマー50mmf1.4付きのジャンク品でした。シャッターは切れるが、ミラーが上がりっぱなしというもので、今使っているESIIの部品を確保しておくために譲って頂きました。しかし、あまりの程度の良さに、出来るものならば修繕して使ってみたいという気持ちになってしまいました。
標準レンズは、小さな打ちキズがある以外、一度は清掃に出されているようできれいなものです。ただし、0.7〜0.9mぐらいのところで、ヘリコイドの回転が渋くなるのが若干気になります。また、絞りの復元も若干渋く、小絞りだと姿勢によっては戻りません。長期保管の後遺症のようです。 (この標準レンズの後日談は → ここ ) |
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開放前点検・カバー類を外しての点検 |
1.障害個所の点検結果と復旧の見込み | ||||
障害−1:ミラーが戻らない
操作してみると、ミラーは復元しませんが、シャッターは何度でも切れます。ごくまれにミラーが動作することがあります。姿勢が水平だと確実にひっかかってしまいますが、逆さや横にしてシャッターを切ると動作するようです。 この異常個所は、底フタを開けて基板を外してみると、すぐ判りました。 フィルム巻き上げの力は、フィルム給装だけでなく、シャッターチャージ、ミラーを昇降させるスプリングのチャージに伝達されます。シャッターを切っても、ひとつのレバー(ピニオン・カップル・レバーとかミラーキャッチレバーとか云うらしい)がひっかかって、ミラーの戻しばねがリリースされません。 |
まず、対処を考えるため、ピニオン・カップル・レバーのひっかかる原因を特定するため、このレバーを外して観察することにしました。 このレバーの観察後、復旧する際に、シャッター幕の巻き上げ軸下端にあるカップラーギアの汚れを清掃して注油したところ、うそのように回復しました。この汚れが軸の回転の抵抗となり、レバーを動かす力が不足していたことが原因でした。 ピニオン・カップル・レバーですが、巻き上げた状態で、これがショックなどで外れてしまうと、フィルム巻き上げさえできなくなってしまうので、外れ易ければ良いというものではありません。 |
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障害−2:オート不良
電池を入れて、露出計の動作を見ると、指示値はすこしオーバーです。バッテリチェッカは正常値を指します。 ただし、自動露光でシャッターを切ると、先幕が動くとすぐ後幕が走ってしまいます。 よくオート不良として売られている研究品に見られる症状です。大切にされていた美品であるほど心が痛みます。 |
この不調は、なんらかの原因で、シャッター半押しで後幕が固定されないためです。 ポイントは、いくつかあり、ソレノイドの断線や導通不良、IC中のコンパレータやソレノイドの駆動回路の破壊など多くの原因が考えられ、なんとも判断できません。 可能性の高いところから順に点検しますが、この時点では復旧の見込みはなんともいえませんでした。 |
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2.その他の点検結果と対処の方針 | ||||
(1) | 自動露光ポジションの時、シャッター幕が最速で走る際に、多少の悲鳴を上げて走ります。 | カップラーギアの汚れを清掃して注油することにより、この鳴きも解消してしまいました。 | ||
(2) | 長期間ミラーアップした状態で保管されていた弊害で、ミラー上部の布製の遮光材に曲げ癖がついて浮いています。 | 実害はないようですが、開放してみて簡単に修正できるなら対処することにします。 | ||
(3) | ESII には機械的なスローガバナはなし。
セルフタイマーのガバナ音は正常と思われます。 |
セルフタイマへの注油は不要と思われますが、前板を外すことになった場合は注油します。 | ||
(4) | 消耗品
遮光材、張り革 |
消耗品
遮光材(モルトプレン)は確保済みのものを使用。 合成革の確保は、同じ模様のものがないので再使用。 |
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3.点検した結果 | ||||
・ オート不良の原因の究明に努めることにします。
→ オート不良の原因の究明と対処は別ページに示します。 ・ オート不良の原因が判明した時点で対処の方針を決めます。 → 対策はソレノイド交換。交換する部品の調達が必要で、前板を外す必要もあります。(がっかり) |
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4.その他美観の問題点と対処の方針 | ||||
(1) | 外観はきれいなのですが、全体的に黒塗装の塗膜のツヤがなく、点々と塗膜の膨潤劣化個所があります。
専用ケースに大切に覆われていた場合に発生するものです。 もちろん、クロムボデーでは、ほとんど問題になりません。 |
これは、専用革ケースの縁のゴム引きの布が劣化すると、ゴムの破片がフケのように落ちるようになります。このゴミが、黒塗装に長期間接していると塗膜を侵してしまうことが原因です。
将来的には補修塗装をしたいと思います。 とりあえず、タッチアップとコンパウンドで磨いて塗膜のツヤを回復することにします。 |
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(2) | フィルムカウンター窓のプラ窓に亀裂が入っている。
巻き戻しクランクレバーに堆積したホコリがメッキを侵している。 |
機能上は支障がないので、当面現状のままとしますが、部品が調達できたら交換します。 | ||
(3) | ファインダーにはひとつふたつ小さいゴミはありますがきれいです。 | ファインダーの清掃は最小で済みます。 | ||
(4) | ノブなどの操作部は塗装のスレもありませんしメッキの輝きも大変きれいです。
シャター膜も今使用しているESII よりはるかにきれいです。 |
− シャッターの分解は今回しません。 |
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(5) | 裏フタの開閉がしぶく、ロックのツメに擦っています。荷重が掛かったり、強く握ったりすると裏フタが変形してしまうためです。ひどい場合は、開かなくなります。 |
裏フタを修正しました。
(両手で持ってそっと力を加えるだけです:備忘録参照) |
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5.備考 | ||||
このESII には底フタの裏面には、94年3月に部品(09-41971)が無くて修理不能の旨の記載がありました。それ以来ずっと退蔵されていたのでしょうが、良い条件で保管されていたことがわかります。
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