作成:2021・01・11


お断り:恐縮ですが、個人的な感想と独断です。


 

  9.SMCタクマー 55mmF2 8枚玉スーパータクマー / SMCタクマー 50mmF1.4

 


SMCタクマー 55mmF2  8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4  SMCタクマー 50mmF1.4
 
 
 本科の追補ページに書いた通りですが、標準レンズの 55mmF1.8/F2に夢中になった時期があり、国内販売されなかったレンズまで集めてみて、結局、みな同じという結論に至りました。ここでは、「黄文字の SMCタクマー 55mmF2」を選びました。いわゆる Value lens(撒き餌レンズ:辛辣だなぁ)と言われるレンズです。55mmF1.8/F2は、昔のSLRではファインダー倍率がほぼ1倍になるので、両目を開けてファインダーを覗いたときの不思議な感じがクセになりました。
 
 スーパータクマー/SMCタクマー 50mmF1.4は、黄変レンズとして有名ですが、1964年登場の8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4はトリウムガラスを使ってないようで黄変したものはありません。手持ちのスーパータクマー/SMCタクマー 50mmF1.4の黄変の程度はまちまちですが、ここでは、メジャーなSMCタクマー 50mmF1.4で、20年前は黄変していなかった、比較的黄変の進んでいない個体を選びました。
 SMCタクマー 50mmF1.4は、少し絞るとしっかりした階調の鮮明なクセのない写真が撮れる素直なレンズで、基本的に同じ光学系を踏襲してペンタックス FA 50mmF1.4まで活躍しました。
 
 

SMCタクマー 55mmF2 の試写



SMCタクマー 55mmF2 試写


SMCタクマー 55mmF2のピクセル等倍画像 (部分)
 

マイクロニッコールPオート 55mmF3.5のピクセル等倍画像 (部分)

 比較のため絞りF3.5で撮影していますが、ピクセル等倍のシャープネスは、マイクロニッコールPオート 55mmF3.5で撮影した写真より甘くて歴然とした差があります。
 コントラストはそこそこ、素直な描写でシャープネスはいまいちとの先入観通りでした。今で言えば撒き餌レンズですから、それなりに立派だとは思います。
 解像されていないディテールをはっきりと写すのは、結構苦労しています。
 なお、解放での周囲の画質低下は、あまりきれいなものではありません。

 F1.8の光学系をF2にダウングレードするため、絞り羽根の前にフレアカッターのようにリングが入っています。レンズのコバがマスクされますから、開放からのフレア抑制に効果があるようです。

 

8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4 の試写



8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4 試写



ピクセル等倍画像 (部分)

 α7RII とLM-EA7は仲が悪いようで、任せっきりだと、ピントが思わぬところに行っていて思い通りになりません。(親指AFにしているのですが、ピント拡大ボタンは受け付けてくれません)
 拡大すると判るのですが、実は、手前を走る電線に合焦しています。

 昔は、開放だと悲惨なピンボケ写真になるので、いやなら少し絞れと言われたのを思い出しました。

 このような細かな絵柄だと良いのですが、クローズアップ撮影のアウトフォーカス部分は、大きく崩れて厚みのあるボケ方をして欲しいのにあまり崩れず、二線ボケのちょっと手前といった感じになって好みではありません。

 8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4も7枚玉 50mmF1.4も、F4以上に絞ると同じようにシャープになるが、8枚玉は、7枚玉に比べて、色収差が小さくシャープネスが良好で被写界深度が深いというのが世の評判です。
 中心部のシャープネスは、マイクロニッコールPオート 55mmF3.5や引き伸ばし用レンズに迫るものがありますが、α7RII の解像力では優劣はよく判りません。しかし、周辺部のシャープネスは見劣りして、F3.5まで絞っても軸上色収差が少し残り、F8まで絞ると極小の倍率色収差だけになります。とはいえ、シャープネスは並のタクマーレンズではありません。ひいき目になるかも知れませんが、開放でもコントラストが良好で、F1.4の標準レンズながら鮮明な写真が得られるレンズです。

 タクマーレンズらしからぬ実力と、黄変しないことが、希少価値だけではない人気の理由かと思います。

 

SMCタクマー 50mmF1.4 の試写



SMCタクマー 50mmF1.4 試写



ピクセル等倍画像 (部分)

 霜が降りたのに、まだ葉は落ちません。この後期型SMCタクマー 50mmF1.4もタクマーレンズらしい描写をします。開放でのシャープネスは、8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4との差は、α7RII ではよく判りません。
 開放での周辺部は、新しいだけのことはあって、8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4より優れていて、開放でも軸上色収差が少なく倍率色収差は感じられません。このレンズも、二線ボケのちょっと手前といった感じになってあまり美しいボケではありません。

 場合によるのですが、SMCタクマー 50mmF1.4もSMCタクマー 85mmF1.8と同じように、アダプターのピン押しリングと絞り連動カプラーが少し干渉することがあります。詳細は、「5.SMCタクマー 85mmF1.8 と SMCタクマー 85mmF1.9」の余談をご参照ください。
 
 
 個人的な好みでは、タクマーレンズらしい描写のSMCタクマー 55mmF2/F1.8がベストです。また、7枚玉と8枚玉のどちらと言われたら、周辺部を含めたバランスの良いこのSMCタクマー 50mmF1.4を選びます。
 明るいレンズだと、被写界深度の浅い開放では、AFだとなかなかピントが思い通りのところに合いませんが、ピント拡大がAFで出来ないのはα7RII の痛いところです。

 日中の屋外であればF8〜11程度までは、LM-EA7による半押しAFが可能です。室内でもF8程度まで半押しAFでもピント合わせできます。SMCタクマー 55mmF2と8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4の絞り羽根は6枚です。いずれもLM-EA7の繰り出し量では最短撮影距離は80cm程度なので、近接撮影では少しヘリコイドの繰り出しで助勢が必要です。

 

このα7RII (FW Ver.4.00)とLM-EA7(FW Ver.6.0)での動作なので、記載内容が再現しない場合はご容赦ください。このレンズを取付ける中間アダプターは、Sマウントレンズでは YIYO M42-Mマウントアダプターを、Kマウントレンズでは YIYO K-Mマウントアダプターを使用しています。
 

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   更新日 : 2021・01・11.

 

 

    余 談

[釈 明]
 あえて1977年登場で、設計を見直している可能性がある7枚玉として、SMCペンタックス M 50mmF1.4と比較してみようとしました。ところが、SMCペンタックス M 50mmF1.4は、ME-Fが一線を退いたあと、シリカゲルを替えるのも忘れて20年以上退蔵してしまったので薄カビどころではありません。
 分解清掃が容易な構造なので分解して清掃を始めたところ、危惧したバルサム面の劣化が進んでいます。コンディションが良くないので、ここでは、SMCタクマー 50mmF1.4を使うことにしました。

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[ひとり言]
 8枚玉スーパータクマー 50mmF1.4には、意図は判りませんが3枚貼り合せレンズが使われています。一方、スーパータクマー/SMCタクマー 50mmF1.4は、これを2枚貼り合せレンズにしています。ここに、黄変するレンズを使用しています。高屈折率ガラスのトリウムが主にα崩壊する際に発生するガンマ線で、ガラス内部で格子欠陥ができるため黄変するようですが、2005年ごろ最初に伺ったのですが、殺菌灯の紫外線を照射するとブリーチできることも知られています。ガンマ線で出来た格子欠陥が、紫外線で加速されるのではなくブリーチできるとは信じられませんでした。そのメカニズムはよく判りません。

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