作成:2021・01・11


お断り:恐縮ですが、個人的な感想と独断です。


 

 7.SMCタクマー 135mmF3.5 と5枚玉スーパータクマー 135mmF3.5


SMCタクマー 135mmF3.5 と5枚玉スーパータクマー 135mmF3.5
後ろの前期型タクマー135mmF3.5を付けたSPは初期型です
およそ20年前にシャッター膜を交換して今なお健在です

 
 重複して恐縮ですが、1963年登場のスーパータクマー 135mmF3.5は、1965年に最後群の貼り合わせレンズが単レンズに変更され、4群5枚の初期型と4群4枚の後期型に区別されます。スーパータクマー 135mmF3.5には、プロダクトナンバーが二つしかないのに、バリエーションが豊富で、どうやって区別するかを本科の追加ページ「気になる スーパータクマー 135mmF3.5」に書きました。
 最後期のスーパータクマー 135mmF3.5が、開放測光に対応し、マルチコーティングされたのが、SMCタクマー 135mmF3.5です。しかし、5枚玉スーパータクマー135mmF3.5とSMCタクマー135mmF3.5、どちらも同じ描写に見えて区別できません。スーパータクマー 135mmF3.5は、内面反射によるフレアに惑わされ、SMCタクマー 135mmF3.5は改善されていると長いこと勘違いしていました。

 これらのレンズは、エルノスタータイプに分類されますが、前期型のスーパータクマー 135mmF3.5は、アサヒフレックス用と同じ4群5枚の光学系で、タクマー度が何か違うような気がします。(たびたび、タクマー度と言って恐縮ですが、ワタシの価値観なのでご容赦ください)

 

SMCタクマー 135mmF3.5の試写



SMCタクマー 135mmF3.5 試写


ピクセル等倍画像 (部分)
 例によって整った諧調で癖のない描写をします。シャープネスはフィルムカメラなら充分ですが、デジタルで拡大するともう少しかもしれません。それよりも、AF撮影中にピント拡大して微調整できないのが不満です。周辺画像では倍率色収差が顕著ですが、開放での軸上色収差とコマ収差は極めて僅かです。二線ボケが気になることはありません。

 念のため、5枚玉スーパータクマー 135mmF3.5と同様に植毛紙を貼りました。なお、点光源や強い反射光の輪郭が色づくのはイメージセンサーの癖のようです。

 

5枚玉スーパータクマー 135mmF3.5の試写



5枚玉スーパータクマー 135mmF3.5 試写



ピクセル等倍画像 (部分)

 タクマー 135mmF3.5と比べると、ヌケが悪いどころではありません。とりあえずマウント面から再後端のレンズまでの範囲ですが、植毛紙を貼って安直な内面反射低減を図りました。

 その結果、シャドーのヌケが良くなりました。これです。コントラストと彩度が改善され、タクマー 135mmF3.5の描写に近づきました。
 シャープネスなんて二の次です。あれ? 案外、質感の描写もいいんだぁ。

 AFは、近いところ、明るいところにピントが合います。シャドーの奥の木造の壁や屋根に合わせるならMFじゃないと。
 
 以前、タクマー 135mmF3.5の描写は目からウロコであることを、本科の追加ページ「植毛紙いらずの 前期型 タクマー135mmF3.5」に書きました。マウントアダプターを介して使う場合、自動絞りの制約はありません。ボケに価値観をおくのであれば、絞り羽根枚数8枚のタクマー 135mmF3.5もよいでしょう。

 4枚玉のSMCタクマー 135mmF3.5 と5枚玉スーパータクマー 135mmF3.5では、差があって当然との思い込みで比較してみると、やはり、4枚玉の周辺画像では倍率色収差が顕著です。しかし、どちらも同じようなシャープネスで、開放でのごく僅かな軸上色収差とコマ収差も同程度でとてもよく似ています。4枚玉は周辺の描写が甘くなるはずですが、フィルムカメラで馬脚を現すほどではなく、その差に気づくことは無かったようです。
 マルチコーテイングっていってもレンズの枚数が少ないのであまりご利益はないようです。もう開放測光じゃなきゃイヤとはいいません。4枚玉と5枚玉のどっちっていったら5枚玉スーパータクマー 135mmF3.5ですよね。
 

 LM-EA7の繰り出し量4.5mmだけでは、焦点距離135mmに対して最短撮影距離は4.7m程度となります。α7RII のAF精度ではナンセンスですが、レンズのヘリコイドでおおよそのピントを合わせてからAFでピントを合わせる使い方になります。正直なところ、ピント拡大してMFできっちりピント合わせをしたほうが精神衛生上良いと思います。
 いずれのレンズも、室内で開放からF5.6からF8程度まで半押しAFでもピント合わせできます。なぜかAF感度はSMCタクマー 135mmF3.5のほうが多少良いような気がします。どちらのレンズも絞り羽根の枚数は6枚です。

 

このα7RII (FW Ver.4.00)とLM-EA7(FW Ver.6.0)での動作なので、記載内容が再現しない場合はご容赦ください。このレンズを取付ける中間アダプターは、Sマウントレンズなので YIYO M42-Mマウントアダプターを使用しています。
 

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   更新日 : 2021・01・11.

 

 

    余 談

[ご参考]
 随分昔なのですが、タクマー 135mmF3.5[Pr.No 43240]を入手して、初めて試写してみて、モヤタクじゃないことに気づき感動しました。SMCタクマー135mmF3.5[Pr.No 43542]、スーパータクマー 135mmF3.5[Pr.No 43540]の内面反射防止の艶消し塗装は経年変化して白っぽくなります。しかし、植毛紙を貼るのはオリジナルを損ねるので躊躇するところがありました。

 背に腹は代えられません。SMCタクマー/スーパータクマー 135mmF3.5いずれもフレアが気になるので、多少なりともタクマー 135mmF3.5の描写に近づけようと、安直に植毛紙を貼ってみた次第です。陽のあたるレースのカーテンで、フレアのテストをしました。朝日の当たるレースの模様がはっきり見えて良さげです。
 

     窓の状況            Pr.No 43240      Pr.No 43540      Pr.No 43542
レースのカーテンでのフレア確認 (丸ボケは外のクルマの太陽の反射光)

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[ひとり言]
 スーパータクマー 135mmF3.5が5枚玉から4枚玉に変更される際に、同等なシャープネスなどを意図して、収差の補正をしたのではないでしょうか。明確に差があるわけではありません。スーパータクマー 135mmF3.5の5枚玉の見分け方は、本科の追加ページを参照ください。コンディションの良い5枚玉の流通量は少ないようです。

 プリセット絞りのタクマー 135mmF3.5やオートタクマーは、絞り羽根が8枚ですが、自動絞りのスーパータクマー 135mmF3.5からは6枚になっています。古いレンズですから、艶消し塗装の劣化によるフレアは要チェックです。

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