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ファインダーの若返りとプリズム腐食の防止
<SPのバリエーションモデル共通>


失敗したときは取り返しがつきません。自信が無い場合は着手しないで下さい。

 


1.
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4.
5.


 はじめに
 プリズム腐蝕の実例
 対処の検討
 作業の手順
 備   考



 
 1.はじめに
この「ファインダーの若返りとプリズム腐蝕の防止」は、たいへんリスキーなので、掲載するのはやめようかとも思いました。しかし、どうしてもやるという方が同じ轍を踏まないよう、私の経験と反省が参考になればと思いこのページを作成しました。
どうしても決行するのであれば、部品取りの1台のファインダーで練習し、その部品をバックアップにしておくことが必要でしょう。
現状、特に気にならなければ、この作業はお奨めできません。

ES/ESII に限らず、この時代アサヒのファインダーブロックは、ダイキャストのベースの上側にプリズムが、下側にスクリーンが取り付けられて、一体化したコンポーネントになっています。ESII の場合、淡黄色のきめの細かい泡のウレタンフォームのようなパッキン材を用いて、プリズムとスクリーンの間にゴミが入り込み難いていねいな設計になっています。


本図はリペアマニュアルの展開図を編集したものです

しかし、25年余りの時間を経てこのパッキン材は、劣化してボロボロになっているだけでなく、真ちゅう製の部品を腐食させ緑青(ろくしょう)錆びも発生しています。ファインダーをミラーボックスから外すと、ゴキブリの巣のようになっていました。
また、この時代のアサヒのファインダーによく水平に発生するプリズム腐食は、ちょうどこのパッキン材が当たっているところに発生しています。
ゴミの進入し難いファインダーなので気づかずにいても、早晩、プリズムの腐食が発生が心配になります。それに、ゴキブリの巣のようになってしまったファインダー回りを見てしまったので、清掃を兼ねて、ぜひプリズム腐食の対策と若返りを図りたいと考ました。

まだプリズム腐蝕の発生していない場合は予防策として、プリズム腐蝕が進行している場合は、プリズムの再蒸着、あるいは部品取りしたプリズムとの交換といった対策の参考として頂けると幸いです。

部品取りにしたESII にはプリズム腐食があったので、このファインダーを分解してどのようにプリズム腐食が発生しているのか観察してみました。また、この部分に手を入れる場合の課題についても摘出してから検討を始めました。

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 2.プリズム腐蝕の実例
 (観察と課題)

ひどいプリズム腐食が発生していたのが、部品取りにしたESII です。また、初めて入手したES(ELECTRO SPOTMATIC)も見た目は僅かでしたが、分解してみるとそれなりに進行していました。また、他のESIIでも分解して仔細に観察すると黒い筋ではなく、白い蜘蛛の糸状にプリズム腐蝕が始まっているものがありました。
このうち、ひどい腐蝕のあったプリズムは、日研テクノさんがプリズム再蒸着を始められたので、早速プリズム単体でお願いしました。2週間強で、きれいに再蒸着されて帰ってきました。

パッキン材は触れればくずれます。
糊を取り除いた状態
プリズム腐食の例
再蒸着したプリズム

 プリズム再蒸着の経緯 → ここ

しかし、古いSPと次に入手したESにはこのようなプリズム腐蝕は発生していませんでした。これらは、使用されているパッキン材が異なり、SPは通常の黒いモルトプレンが使用されており、このESでは、肌色のスポンジ状の緩衝材が使われておりました。

ESII の場合、ウレタンフォーム状のパッキン材は両面テープのようなものでプリズムに直接貼り付けられています。両面テープのように見えますが、粘着材はゴム糊のようですので、薄い透明フィルムにパッキン材のシートを糊で貼ってから直線にカットして、さらに糊(シール糊の場合とゴム糊の場合があるようです)でプリズムに貼っているようです。

このようにパッキン材を透明なフィルムを貼って裏打ちしている理由は、貼るときに伸びたりしないように作業性を考慮しているためだと思われます。しかし、25年以上してまだ糊は固まっておらず、粘着力があります。どうも、これが元凶のようです。

プリズム(緩衝・防塵)用

スクリーン(防塵)用

[ 観 察 ]
ESII のプリズムまわりのボロボロになったウレタンフォーム状のパッキン材を取り除いてみました。
プリズムは、黒い保護塗料が塗られていますが、糊が付いていた塗膜は膨潤しています。塗膜の膨潤が鏡面まで進行すると、保護塗料は用を成さなくなりメッキの腐蝕が始まるようです。

[ 観 察 ]
常識では、こんなところに緑青錆びが発生するのは理解できないのですが、パッキン材に接していた部分の真ちゅう部品に緑青錆びが発生しています。このパッキン材は劣化に伴い、吸湿だけでなく、何か酸性の物質が発生するのかもしれません。
このパッキン材も、薄いフィルムにパッキン材のシートをゴム糊で貼ってからカットして、さらにベース側にゴム糊または、シール糊を塗布して付けてあります。

[ 課 題 ]
フィルムに付いている糊は強力で、これを無理に剥がすとプリズムの劣化した保護塗料が剥がれます。特にプリズムの側面は、スリガラスになっていて塗料が塗布されているのですが、ここは、簡単に剥がれてしまいます。鏡面の部分は、それよりは剥がれ難いのですが、劣化した塗膜の場合は剥がれます。塗膜が剥がれると、目立たない腐蝕が耐えがたいレベルになる可能性もあると思われます。
要するに、我慢できるプリズムも一気にとどめを刺す可能性があります。とどめを刺してしまったら、諦めてプリズムの再蒸着を依頼するか、良品との交換が必要となります。

[ 課 題 ]
プリズムとスクリーン、メーターを外してベースだけを対象に作業するのであれば、パッキン材の撤去、清掃、復旧とも特に課題となるところはありません。

ただし、露出計の目盛板(フィルム)はキズがつき易いので注意が必要です。作業が終わってからキズに気づいても手遅れです。
また、スクリーンそのものもキズや汚れがつき易く、これをきれいにしようと安直に手をだして、ひどい目にあいました。

プリズム腐食に関して、全てのESII /ESが必ずしも手遅れかというと、必ずしもそうでもありません。664万番台のESII は、塗膜がほとんど侵されておらず、パッキンの下地はきれいに剥がすことが出来ました。パッキン側はゴム糊ですがプリズム側の糊がシール糊だったようです。要は、ていねいに作業されたものに当たるとか、4半世紀間の保管条件が良かったかという運に左右されるようです。

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 3.対処の検討

(1) 交換するパッキン材
初期(SN:660万番台〜)のESII のファインダーブロックでは、プリズム用、スクリーン用とも各2箇所に、A、B、C、Dの4種類のパッキン材が使われています。しかし、既に664万番台のボディでは、ベースのダイキャストが変更されていて、プリズム側のBは不要になっています。さらに、670万番台のボディでは、メータ開口部のAも省略されています。
ファインダーの若返りということで、これらを新しいパッキン材に交換します。


(2) 使用材料
同じようにウレタンフォームで復旧してもよいのですが、耐久性も期待でき、安心して使えて、素人でも扱いやすい材料ということが課題になります。そこで、発泡ポリエチレンシートでパッキン材を作ってみることにします。具体的には、食器棚などの敷物に使うもので、柄や色がプリントされており、これらの模様は薄いポリエチレンフィルムに印刷されています。包装材として作られているものは、なにも貼られていない白いシートです。これをカットして使います。
発泡ポリエチレン利点は、吸湿性がない、化学的に安定といったところですが、敷物、包装材用のものはあまり弾力性がなくへたり易いのが難点です。理想を云えば、断熱材やキャンピングマットのようによく発泡しているものもありますが、薄手のものが得られないので、妥協しました。

何台かは、発泡ポリエチレンを使用したのですが、現在は、モルトプレンを使用しています。なぜかというと、厚みの違いやシール糊あり、なしが選べて作業が楽だからです。(2002・03・05追記)


(3) 形状・寸法
A、B、C、Dの4種類のパッキン材のうちプリズムに巻かれるDが、オリジナルでは、直線に裁断したクッション材が使われています。ここでは、生産性とか原価をとやかくいう人はいませんから、立体的にフィットする形にしました。

現在は、モルトプレンを使用していますから、このような複雑な裁断は不要です。(2002・03・05追記)

 新しく作成するパッキン材の作成(型紙付き) → ここ

ファインダーブロックが納まる、ミラーボックスにも、背面部分に遮光用モルトプレンがありますし、露出計が収まる部分に(内外からコの字型の)パッキン材が使われており、露出計指針の開口からのゴミの進入を防いでいます。これは、ミラーボックスを外さないと交換は困難ですので、形を保っていればそのままにしておくのが得策だと判断しました。

現在は、下図のようなシール糊付きのモルトプレンを使用して、ミラーボックスを外さない場合でも対策しています。(2002・03・05追記)

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 4.作業の手順
  諦めるなら、まだ間にあいます。

(1) ファインダーブロックの分解
ファインダーブロックの外し方は、ボディの開放のところに記載した通りです。今回の場合、配線を外し、ファインダーブロックを降ろしてから接眼レンズ部分を外して作業したほうがよいと思います。接眼レンズ部分をボディ側に残して作業することも可能ですが、若干リスキーです。
また、スクリーンのフレネルレンズやコンデンサーレンズ、露出計目盛板は、たいへんキズがつき易いものなので、部品の角や工具を当てない、触らないという姿勢が必要です。

1.プリズムの取外し
 まず、スプリングバンドを外してプリズムのカバーをとります。ゴム糊で回り止めされているベースの
 ロックビスを緩めると、プリズムがベースから外れます。(パッキンに弾力があるときは2本とも緩める
 必要あり)

2.スクリーン枠の取外し
 ES/ESII では2本(SPでは3本)のビスに引っ掛けてあります。このビスを外すと、スクリーン
 枠の中に、フレネルレンズ、コンデンサーレンズ、枠型のスプリングが2枚入ったまま外れます。
 フレネルレンズ、コンデンサーレンズは、取り外したなら、すぐに石鹸水に浸します

3.メータの取外し(パッキン材Aがない機種なら、不要なので外さずに作業します)
 サインペン等で元の位置の合い印を付けてから、2本のビスを外します。

尚、ピント位置は、ミラーボックス側の調整ネジで調整してあるので、これに触らなければ、ピントの位置は分解前と同じになるはずです。
中心からのずれは、プリズムのロックビスで多少調整出来ますが、パッキンを挟むと成り行きにしかならないので、あまり気にする必要はないと思います。ただし、ミラーボックスを外した場合は、この限りではありません。


(2) パッキン材の更新

プリズム(緩衝・防塵)用
パッキン材B・D

スクリーン(防塵)用
パッキン材A・C

[ 準 備 ]
オリジナルのDのパッキン材は、直線にカットして、立体的なプリズムに巻きつけてありますので、歪みや隙間が出来てしまいます。それを、糊で付けていますが、多少無理が生じます。
ちょっと面倒ですが、新しいパッキン材は、プリズムにフィットする形にしました。

[ 準 備 ]
オリジナルのパッキン材Cは同様に、直線にカットして使います。
[ 撤 去 ]
一番リスクの大きな作業です。プリズムの後下のところから、一回り貼ってあるはずですが、一気に剥がすのは危険です。まず、パッキン材だけ丁寧にむしり取ります。
その後で、下地のフィルムを剥がします。針を包丁の代わりに使って、魚をおろすようにそぐとうまく行くようです。それでも塗料が劣化していると剥がれるところがありますがやむ得ません。

[ 撤 去 ]
ベース側に残った古いパッキン材は、はじから剥がします。
その後で、下地のフィルムを剥がします。
[ 清 掃 ]
プリズム側は、ゴム糊をアルコールでふやけさせて、慎重(気長)に清掃します。あせってメッキにキズを付けてしまっては元も子もありません。塗装していないガラス面は、よく清掃します。

1日置くと、正面反射面のふやけた塗膜も乾いて締まってくぼみます。剥がれたところと併せてここを黒ペイントでタッチアップします。状況を見ながら3回ぐらい重ね塗りします。

ベース内にはみ出した糊や、パッキン材Bがある場合はこれをを撤去し、付着している糊を清掃しておきます。

[ 清 掃 ]
スクリーン枠は、フレネルレンズを枠から無理には外さず、かつ触れぬよう、緑青錆びを拭き取ります。フレネルレンズの凹凸面はキズがつき易いので綿棒などで拭いてはいけません。(エアブローのみ)
コンデンサーレンズも汚れているなら洗剤で水洗だけに留めておきます。
これらのレンズはキズを付けますからブラシやスポンジを使うのは厳禁です。アルコール類の使用も厳禁です。洗剤は、台所用の中性洗剤がよいでしょう。

ベース側面のメータ取り付け部のパッキン材Aがある場合はこれを丁寧にむしり取って撤去し、付着している糊を清掃しておきます。

[貼り付け]
初期のESII では、まず、ベース内にBのパッキン材を、両面テープで貼り付けておきます。

Dのパッキンは、正面反射面には直接両面テープのをなるべく貼らないないようにします。防塵という目的には反することなのですが、将来のプリズム腐食には替えられません。プリズムには側面と後ろ側だけを両面テープで留めるようにします。
正面の元の場所に合せれば、立体的に裁断してあるので無理なく巻けるはずです。

使用する両面テープは、紙ベースのものとしましたが、何が最適なのかはまだ自信が持てません。

[貼り付け]
初期のESII では、まず、ベース側面にAのパッキン材を、両面テープで貼り付けておきます。

メンディングテープで裏打ちしたほうを内側にします。これは、ファインダー内部にパッキン材や、糊がはみ出さないようにする配慮です。
貼り付けは、ベース側のみぞに両面テープを張って貼り付けます。

スクリーン枠は、ミラー側のパッキン材が当たる部分も腐食していると思います。ここが気になる場合は、メンディングテープをコの字型に切ったものを貼ってガードしておけば良いと思います。


(3) ファインダーブロックの組立て

ファインダーブロックの組立て方は、分解の逆です。ファインダー内にゴミが入らないようスプレーのエア(フロン)を吹き、ルーペでゴミがついていないか確認しながら順に組み立てます。

1.プリズムの取つけ
 ベースにプリズムを取り付け、ロックビスを締めます。パッキン材を軽く押し込んで間隙を作らないよう
 にします。
 スクリーン側から、うまく納まっているか確認します。(スクリーン枠を付けたまま、プリズムを取り付
 けないように)
 問題なければ、カバーをかけてスプリングバンドで固定します。

2.メータの取つけ
 メーターを外した場合は、元の位置の合い印に合わせて取り付けて2本のビスを締めます。

3.スクリーン枠の取つけ
 スクリーン枠の中に、フレネルレンズ、コンデンサーレンズ、枠型スプリングを2枚入て、ベースと合う
 か確認します。
 まず、ベース片方のビスを付けて、これに引っ掛けて、スクリーンをかぶせて押さえつけて外したビスを
 取り付けます。


接眼レンズを取り付け、明かりにかざして、ゴミなどが入ってないか隅々まで確認します。清掃が必要な場合は、スクリーン枠を外して清掃します。問題なければ、プリズムのロックビスは、ゴム糊で回り止めをしておきます。
ミラーボックス内のパッキン材を潰さぬようファインダーブロックをミラーボックスに収め、4本のビスで取り付けます。アイピースシャッターのリンクをつないでスプリング掛けて固定します。外した配線を復旧して終了です。

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 5.備  考
ネットオークションに出品される「ジャンク品」を見ると、このようなのプリズム腐食は、SシリーズだけでなくKシリーズのボディでも見られるようです。極端に古いSP等では少なく、1970年代前半の機種に集中していることから、この時期のアサヒの製品共通の課題と考えられます。

既に、プリズム腐食が発生してしまった場合、今までは、もう1台の「ジャンク品」から、部品取りして使うのが現実的な対策でした。しかし、プリズムの再蒸着ができるので、それなりの費用は掛かるのですが心強い限りです。プリズム腐食していない「ジャンク品」を納得できる値段で見つけるというのも、運も左右するのでなかなかたいへんです。
ESとESII の時代でプリズムの形状が若干変わっています。新しいものは、正面反射面の上端コーナー部が小さくカットされています。古いプリズムは、カバー(プリズムプロテクター)が当たって付きません。このコーナーのカットは、個々に同じではなく、カットしてあれば良しとされていたようです。
従って、新しいプリズムは、古いほうに使えますが、逆は不可です。ただし、古いほうのカバーの接眼レンズ部分を切断して、このカバーとともに使えば、移すことは可能です。部品取りの「ジャンク品」を選定する上で留意点としてください。
露出計目盛板だけを無傷で剥がすのは困難です。目盛板をキズ付けてしまったら、ベースごと交換することになると思いますが、CdS基板は、(場合によってはメーターも)元のものを使うことが必要です。

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 作成日 : 2001・01・18.
 更新日 : 2002・03・04.