作成:2001・06・17
お断り:恐縮ですが、個人的な感想と独断です。
オールド スーパータクマー 55mmF1.8 のレストア
SMCタクマー120mmF2.8とともに譲って頂いた標準レンズなのですが、オートタクマーからスーパータクマー(Sタクマー)への過度期のSタクマー55mmF1.8で、古い(1962年ごろの)ものなので気合を入れて不調個所の手入れとレストアをしました。
この55mmF1.8の不調は、オート・マニュアルとも小絞りにならないことでした。分解・手入れ・仮組みといったことを何度かくり返し、満足できる状態になりました。清掃してみると、外観も年式の割には手ズレが少なく、光学系もきれいです。彫り込み文字のペイントは退色というより、顔料が風化しているようで、オリジナルの色は想像で絵の具を注しました。 |
Sタクマー55mmF1.8 新旧モデル比較 左の新のほうも1965ごろの最古のモデルです
オールド スーパータクマー 55mmF1.8 について
ご存知のように、オートタクマーは、撮影時に自動的に絞り込まれますが手動で開放に復元して使います。しかし、最終期のオートタクマーの標準レンズは、これが自動で開放に戻るように改良されました。つまり、機能的にはその後のSタクマーと同じなのですが、絞りリングと絞込みレバーの回転方向が逆です。
過度期には、単に銘柄だけSタクマーにしていたということです。ですから、このレンズは、後のSタクマーよりコンパクトな鏡胴のデザインも、光学系もオートタクマーのままです。 外観がコンパクトな理由は、ミラーボックスがちょっと小さなSV以前のボディに合わせてデザインされているためでしょう。 |
レストア
No. | 項 目 | 内 容 |
1 | 今回の分解手順 |
1)フィルタ枠を外す
飾りリングを外そうとして回すとフィルタ枠ごと外れました。
これでは、フィルタごと外れてしまうという弊害が生じますので、後の時代のものではフィルタ枠はビス止めです。 2)距離リングを外す 3本のビスを外すと距離リングが取れます。
後の時代のものは安直に外すと無限遠が来なくなりますが、これは大丈夫です。但し、生産性は悪かったと思います。 3)指標リングと絞りリングを外す 後の時代のものと同じで、3本のロックビスを弛めると指標リングが取れます。
続いて、絞りリングが取れます。この時、スチールボールを紛失しないよう注意します。 4)マウントを外す 後の時代のものと同じで、3本のビスを外すと、マウント部とヘリコイドを含む鏡胴本体に分割できます。
5)前群と後群のレンズホルダーを外す。 レンズホルダーを回して鏡胴本体から外します。たいへんオーソドックスな構造です。尚、後群のレンズホルダーを外す時は、相手が動いてしまう可能性があるので、合印を打っておきます。
レンズ清掃の必要に応じて、さらに、レンズホルダーを分解してレンズ清掃をします。
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2 | 今回の修理 | 1)障害の内容
オート・マニュアルとも小絞りにならない。
開放から絞りを絞っていっても、F4ぐらいからしか絞り込まれて行かず、F16まで絞ってもF8程度までしか絞り込まれません。 2)原因と対策 マウント部の絞り機構のレバー類を修正しては仮組して具合を見るということを、何度も繰り返しました。
しかし、原因は、マウント部の絞り機構ではなく、ヘリコイド部に挿入してある最内側の絞り羽根の付いている鏡胴に、大きな力が作用して動いてしまったことが原因でした。過去に、分解して清掃などをした際にずれてしまったようです。 元の位置を探すため分解・組立てを、納得のゆくまで何度も繰り返しました。
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3 | レストア | 1)清掃
外観の清掃は、分解したリング類を洗浄しました。
光学系は、レンズホルダーを最小限分解して小カビのある絞り前後のレンズを清掃しました。カビ跡も残らない軽微なものでした。 2)今後の課題 彫り込み文字のペイントは退色というより、顔料が風化しているようで、オリジナルの色を想像して(白)チタンホワイトと(黄)カドミュウムイエローミデアムを注します。
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物好きにはたまらない一品だと思うのですが、ぜひ欲しいという人は少ないようです。「ペンタふぇち」度が低い人間だと「買い取ってくれる中古カメラ屋さんを捜すのが大変じゃないか」といった認識しかなく、経済的な尺度での評価は悲しいところです。
珍しいとは云え標準レンズなので生産数は多く、ネットオークションにはSVなどのボディに付いてけっこう出てきます。 |
レストア前後の状況
レストア前の写真はこれらのレンズを譲って頂いた方から提供頂きました |
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レストア後の写真は、なるべくレストア前の写真と同じアングルになるように撮りました。
SMCタクマー120mmF2.8のほうは、何の異常もなく、分解しての清掃はしていません。 そして、試写してみました → ここ |
最後に
この過度期のレンズの相違点は、絞りリングと絞込みレバーの回転方向が、最終型のオートタクマーのままで(Sタクマーとは逆で)あること、指標リングの真中のインジケータが、赤ひし形出なくて赤まる型のままであることです。マウント部と指標リングの流用を部品が払拭するまで続けたことが理由だと思います。指標リングが先に部品は払拭したようで、マウント部だけ逆というものも存在しています。
F2、F1.8の2種類レンズで事情は違うのかもしれませんが、これらの相違点が改められるのにけっこう時間がかかったようです。相違点が改められた後、このコンパクトな標準レンズは、SPと共に光学系も新設計のレンズが登場(1964年)するまで供給されました。新しいSタクマーは、SPのデザインに合わせて、大きな操作リングのおなじみのデザインになりました。 重要なことに気づきました。このSタクマー55mmF1.8(おそらく最終型のオートタクマー55mmF1.8とF2.0も同様)は、開放測光が可能なES/ESIIなどには取り付けることが出来ません。その後に生産されたSタクマーより若干絞込みピンが内側にあるため、これが、ボディ側の絞りの伝達機構に当たってレンズをねじ込むことが出来ません。
このことは研究本にも書いてあったのですが、読んだ時にはなんのことか理解できませんでした。やっとこういうことだと判りました。
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50mmF1.4との大きさの比較。彫り込み文字に絵の具を注しました。