作成:2002・05・27

SMCタクマーレンズの手入れ

広角レンズ編

 SMCタクマー135mmF3.5に続いて、SMCタクマー35mmF2の絞り粘りの手入れをのための分解方法を示します。広角レンズだけでなく多くのSMCタクマーに関しても、共通する部分があります。

 この教材は、「SMCタクマーレンズの思い出」に記載したように、35mmF2をニコイチした残骸です。絞りの粘りが回復しても、「ヤケ」が少し進んでいて、最後群のレンズにスリキズありの難あり品ですが、一応使えるようになりました。





1. 飾りリングを外します。

135mmF3.5で説明したように、ゴムシート(私のは瓶のフタ開け)に適当なフタを包んで、飾りリングにあてがって回します。

潤滑油「アルファルーブ」を1/2滴ぐらいフィルタネジ溝に従って浸透させておくと簡単に開きます。後で潤滑油は拭き取ります。

フィルタ枠が変形して飾りリングが外せないレンズは対応出来ません。

2. フィルタ枠を外します。

3本の(+)ビス(SMCタクマーの場合)を外します。
右の写真で丸印のビスです。

このビスは、たいてい接着剤で回り止めしてあります。
35mmF2の場合、ここに入るドライバの径は2.5mmでもフィルタネジ溝を傷つけずに入ります。
3. 前群レンズホルダを外します。

レンズホルダは、ヘリコイド(距離環)を外さなくとも、レンズを繰り出せば外れます。

35mmF2には、レンチの引っ掛かる溝はないので、ゴムシートを被せて回します。
標準レンズの50mmF1.4のようにレンチの溝があるものでも、ゴムシートを被せて回すほうが楽だと思います。

 

 


後群レンズホルダも、マウントを外さずに、レンチの溝があるので、レンチを使って外せます。
ただし、リスキーなので、マウントを外してからのほうがお奨めです。(8.の段階で外すことができます)

外側の赤い矢印がレンズホルダの溝です。

後群は、このレンズのようにレンズホルダにまとまっているものと、標準レンズ50mmF1.4のように鏡胴に1枚ずつ組み込んでいるタイプのふたつがあります。

 


   前群レンズ清掃の場合は → こちら
   ↓ 絞り粘りの手入れ

4. ヘリコイド(距離環)を外します。

ワッシャ付きの3本の(+)ビス(SMC-タクマーの場合)を外します。
右の写真の赤い丸印を付けた3本のビスです。

このビスは、接着剤で回り止めしてあります。
このビスを緩めると、ヘリコイドネジと距離環が離れるので、距離指標は調節しないと合わなくなります。


(ヤケが進行していますね)
5. 指標リングを外します。

3本の(−)ロックネジを緩めると指標リングが外れます。

あくまでも緩めるだけです。

これは、ほとんどのSMCタクマーレンズに共通です。
6. 絞りリングを外します。

絞りリングはずらすだけで外れます。

スチールボールを確保します。


絞りリングのクリック感は、このボールの働きです。無くすと悲しいことになります。

これも、ほとんどのSMCタクマーレンズに共通です。



7. マウント部を取り外します。

3本の(+)皿ビス(SMCタクマーの場合)を外すとマウント部とヘリコイド部は外れます。

マウント内では、軸方向の動きと周方向の動きを巧みに変換しています。
この動きがスムースでないと、絞りは粘ります。
よく、観察して、潤滑油を微量注油しておきます。

支点のネジが緩んでいるのが絞りの粘りの原因の場合もあります。チェックしておきましょう。

8. 後群レンズホルダを外します。

この段階で外す場合、ゴムシートを被せて回します。レンチを使うより、リスクが少ないと思います。

 


   ここからが本題です。35mmF2を教材にして話を進めます。
   135mmF3.5は絞りがユニットになっていて簡単でしたが、ちょっと勝手が違い難易度が上がります。

9. 絞りの押さえリングを外します。

このリングにレンチ溝がありますから、前群側からレンチで回して弛めます。その前に、以下の2点に留意してください。
標準レンズの50mmF1.4のように、このリングを鏡胴から三本のロックネジで押えているものもあります。

このリングには、回り止めの接着剤が塗ってありますから、弛める前にスポイトでアルコールを滴下しふやけさせ(溶かし)ます。
復旧時には、また緩み止めが必要です。極少量のゴム糊で可と思います。

弛める前にこのこのリングには、マーカーなどで合印を書いておきます。
実は、このリングを締めすぎると羽根は動かなくなります。組立て時には具合をみながら締め込み位置を決めます。そのための目印です。軽く締め込んだ位置から1/4〜1/2回転弛めたところになると思います。

弛めるときは、必ず上向きにしておきます。

10. 絞り羽根を取り去って手入れします。

絞り羽根を取り去ります。羽根に油が回っている場合は、一枚ずつ揮発油で洗います。

そのまま、絞りの駆動リングも外れます。

中は、潤滑油が古くなって粘っていると思います。
これが、絞りの粘りの正体ですので、アルコールを浸した布などで拭き取ります。




マウント側の3本の(+)皿ビスを外すと支点リングが取れますので、これも外して清掃してもかまいませんが、絞りが正確ではなくなる可能性があります。
(下の写真の赤い丸印を参照)

この駆動リングは擦動面積が大きいので組立て前にアルファルーブを塗布しておきます。
また、押えリングのネジ部も薄く塗布しておきます。
塗布といっても、濡れた状態でなく油気がある状態にして、絞り羽根が触れる部分は、アルコールを浸した布で油気を拭きとっておきます。
一度、羽根を組み込まず、リング類を仮組みしマウントを付けてスムースな動作を確認します。


バラバラになった絞り羽根は、元あったように一枚ずつ鏡胴のなかで並べます。
最期の1枚を感で差し込むのがちょっと難しいところでしょうか。

ここまでやって気が付いたと思いますが、35mmF2の場合は、うまく前群・後群のレンズホルダが外せれば、ヘリコイドもマウントも外さずにこの作業が可能です。
最初は、ここで説明した手順で確実に作業しましょう。



   後群レンズ清掃の場合は → こちら
   ↓ 絞り粘りの手入れ完了

あとは、逆の手順で組み立て、4まで戻って距離環を仮止めし、3まで戻って前群のレンズホルダを付けます。
無限遠の調節の仕方は、135mmF3.5のところと同様で、3本のビスをそっと緩めて、距離環を無限遠に合せてビスを締めます。飾りリングを締め付けて作業は終わりです。



 

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