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ストロボを搭載した「ピッカリコニカ」のような一眼レフです。サイズも「ピッカリコニカ」とほぼ同じサイズです。しかし、ストロボはホップアップはしません。指で押し上げるのです。
そして、プログラム式ミラーシャッターは自動露光ではありません。前板のボタンを押すと測光してファインダー内のLED表示で露出の適否を示します。
レンズにASA(ISO)の切替えが付いているのですが、64、100、400の3段階だけしかありません。マニュアルの露出計ならTTLに出来るはずですが、なぜか受光窓がレンズ先端に付いています。レンズの交換はハナから考えていません。 |

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「写ルンです」は、このST−Fより後の製品ですが、巻き上げやストロボもよく似ています。「写ルンです」と違ってフィルムは詰め替えて使えるのですが、プラスチックの素材や成型などは後年のものに比べられるほど上等なものではありません。
裏フタはスチールの薄板のプレスで、貼り革が貼ってあります。フジが始めたことなのですが、フィルム窓があって中のフィルム銘が覗けます。
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ファインダーがすごい
ここまでのアウトラインだと「なんだつまらない」と思われるでしょうが、搭載しているファインダーにはびっくりです。現行のペンタミラー方式の下位機種など足元にも及ばない(昔の当たり前のサイズの)大きなファインダー像です。
分解してみると感激します。立派なプリズムが載っているのです。OM−1でコンパクト化のために採用された方法だったと思いますが、スクリーン面が凸レンズになったものでコンデンサレンズを兼ねてファインダーの全高を押えています。
尚、スクリーンはマイクロスプリット/マイクロプリズム併用です。マットは明るくてよいのですが、その分素通しに近く、周囲でピントを合わせるのは難しいようです。 |
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レンズはなかなかの良品
40mmF2.8レンズは、3群4枚のテッサー型と思いますが、最後群のコバが光るのでフレアを心配したのですが、予想以上に逆光に強いようです。これは、普通の一眼レフのようにミラーボックスの反射があまり影響しない構造のせいかも知れません。このレンズの写りは私も好みです。ただし、レンズそのもののボケはきれいですが、三角形の絞りが足を引っ張っる場合があります。
フラッシュマチックが付いていて、気分はGNニッコールみたいです。最短撮影距離が1mで、クローズアップレンズは2〜3種類が必携となります。
実は、絞りリングは付いているのですが、レンズ鏡胴の中に絞りはありません。ペンタックス110のようなレンズ交換式にすることは容易だと思うのですが、ほんとうに残念なことにレンズは固定です。
オプションで、フロントコンバージョンレンズがあったのですが、見たことはありません。 |
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シャッターは奇想天外
このプログラム式ミラーシャッターというものは、あきれるほどシンプルなものです。ミラーの下に板があって、そこに五角形の穴があいています。レンズの絞りリングに応じて動くストッパーが、ミラーの上昇する位置を制限するようになっています。
巻き上げてシャッターを切ると、低部のレバーはこのミラーを蹴り上げます。ストッパーにミラーが当たると跳ね返って元に戻っておしまいです。
開放の時だけ、ミラーはスクリーンのところまで上昇するのです。
ミラーは、シャッターであり絞りでもあるわけで、後玉の小さなレンズをカバーでする最小の部分だけしか貼ってありません。絞りに応じて昇降時間が違いますので、確かにプログラムシャッターというのはまんざらウソではないのですが、こんなので露光量の再現性が得られているのか不思議です。
しつこいようですが、自動露光ではありません。マニュアルで測光して露出を決めます。 |
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備 忘 録
ST-F修繕の内容
入手したST-Fは2台とも正面の反射面にプリズム腐蝕が発生していました。
1台目に入手したST-Fのプリズムを、日研テクノさんで再蒸着してもらいました。接眼レンズ越しには判りませんが、ガラスまで侵されていて、再蒸着しても腐蝕の跡が若干残りました。
プリズム腐蝕の原因は、クッション用のモルトプレンの劣化に起因するものです。また、プリズムの保護塗料も、あまり丈夫なものでないことも辛いところです。
プリズム腐蝕していなくとも、プリズムのクッション用モルトプレンは交換しておくことをお奨めします。
修理したのは、開放でも絞り・シャッターが全開にならない、プリズム腐蝕があるというものです。ストロボもF5.6なら発光しますが、開放では発光しません。
ミラーがストッパーは、シンクロのスイッチも兼ねていますから、ミラーがストッパーに当たるまで蹴り上げられていないのが原因です。で、底板を外して、アルファルーブを2ヶ所ほど軸や擦動する場所に塗布したら、あっさりと回復しました。プリズムは、先に再蒸着しておいたものに交換しました。
最初の1台目は擦動個所を調べるための犠牲になってしまい残骸と化しました。 |
ST-Fの雑感
とにかく、世界初のストロボ内蔵一眼レフというタイトルだけではありません。
このST−Fは値段もさることながら、とても日本人が考えたものとは思えない割り切りと創意工夫が詰まっていています。
受光窓がレンズ先端にあるのでレンズ交換式は考えてもいなかったのでしょう。それなら絞り優先の自動露光にすることは容易なはずですが、この後継モデルが世にでることはありませんでした。
ミラーシャッターの上昇・復元の途中でマグネットが保持するという真面目な課題に対して、どのように楽しくてユニークな発想に基づくメカニズムだったのか、この人たちの答案をぜひ見たかったところです。 |
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付 録
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