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ESII のオート不良原因の事例と対処例
3台目の場合


このESII だけのオート不良と露出計不良事例で、類似の障害がかならずこのように対処できるものではありません。

 1.予習
   ESおよび、ESII の開放測光メカニズムをおさらいしておきます。

Automatic位置で電源スイッチが入ります。さらに、シャッター半押しでAND条件の電源スイッチが入り、回路に通電します。明るさに応じてCdSに流れた電流にを基板に入力します。これを対数圧縮してメモリブロックと称するFETアンプでバッファ出力されます。
このアンプには接点(メモリスイッチ)がついており、ミラーボックス直下にあって、ミラー上昇・絞込みに連動するレバーでこの接点が開きます。接点が開いた時は、ゲートに設けられたコンデンサにチャージされた電圧をバッファして出力し続けます。こうして、絞り込む直前の明るさに応じた電圧(電流)が保たれます。このアンプ部分が「記憶回路」なのです。
フィルム感度・露出倍数設定用の擦動抵抗と、開放F値設定用の擦動抵抗を流れる電流値は、それぞれ対数圧縮してから、メモリブロックの出力とともに加減算してメーターに表示します。また、自動露出のための逆対数値に変換します。この値により、タイミングコンデンサから定電流回路に流れる電流を制御して、電圧の変化で後幕を開放する時間を調節します。
(以上は、私の独断的な理解であり、誤っているかもしれません)

[MEMO]
 まず、2絞り程度プラスの指示をする原因が基板に問題があるためか、ボディ本体に問題があるためかを確認するために、良品のESIIと交換してみることにしました。
 問題のあるものを不用意に交換すると、良品を壊す可能性があるのですが、今回の場合、問題のESII がかなり良好なものなので、この方法を採りました。
 現状、良品の基板の手持ちはあるので、基板側に原因があれば簡単なのですが、結果は、ボディ側に問題があることが判明しました。(ESIIの特徴として、ボディと基板は無調整で交換可能というのがIC化の特徴の一つと宣伝されていました)

 2.オート不良と露出計不良要因の確認(その1)
   底フタだけを外して点検してみました
 確認内容 確認結果
(1) 例によって、電池と基板を外し、ソレノイドの導通を確認しますす。断線していなければ、この時の抵抗値を測定します。 導通はあり、348Ωでした。測定値が安定しないのが若干気になります。(後で外してソレノイド単体で測定すると334Ωでした)
(2) ソレノイドが導通しているのであれば、どの程度の電流で後幕を保持できるか測定します。12mA以上必要なら、前板を開けて電磁石コンポーネントを手入れする必要があります。 あとで考えると、悔やまれることですが、先を急ぐあまり、この確認を失念してしまいました。もしかしたら、3.(1)の作業は無駄だったかもしれません。
(3) 次に、フィルム感度・露出倍数設定用の擦動抵抗の可変範囲を測定し良品のボディの値と比較します。 抵抗値はアナログ値としては、たいへんよく良品と一致しており、正常でした。
(4) 次に、開放F値設定用の擦動抵抗の可変範囲を測定し良品のボディや部品取りのボディの値と比較します。 抵抗値は、他のボディとほぼ1絞り半分の相違がありました。これが、露出計の誤差の原因だと断定はできません。単に擦動抵抗を交換すればよいのか、部品取り用のESIIのものが交換して使えるかはやってみたほうが早いようです。
(5) CdSセルの抵抗値を良品のボディの値と比較します。光源はライトボックスのように均一で、照度の変えられる光源が必要です。CdSセルのコンポーネントは、抵抗が付いていたり、いなかったりと、安易な交換ができるものではないようです。 均一で、照度の変えられる光源が必要なのですが、そんなものに代用できる道具は、おいそれと見つからないので、この確認は省略します。
(6) ここまでが正常だった場合、メモリブロックの特性が正常かを確認することが必要です。この確認は、基板と電池を戻して、条件を変えて入出力の変化を測定し、良品のボディの値と比較します。 CdS素子の代わりに可変抵抗をつなぎ換えて測定することが必要なのですが、今回はこの確認は道具が準備できないので省略します。
 3.オート不良と露出計不良要因の確認(その2)
   ここまで来たら、トップカバーと前板を外してみましょう。
 確認内容 確認結果
(1) 電磁石コンポーネントを取り外し、直接ソレノイドの抵抗を測ると、334Ωでしたので、電磁石コンポーネントは交換せずに使用することにしました。 そのコンポーネントをボディに取り付けて、後幕を8.0mAの電流でも保持できるように調整しました。しかし、部品取りのESIIの主基板でないと、スローシャッターは切れません。動作が不安定なので、断線やコネクタの汚れを疑い、点検と清掃手入れをしました。
(2) 開放F値設定用の擦動抵抗の値は、他の3機種もばらばらですが、このESII だけやはり変です。問題の擦動抵抗を開けてみます。とにかく、部品取りとしたESII のものと交換して改善されるか確認してみます。 部品取りのESII の擦動抵抗のほうが、品質がよいのでブラシ側をそのままにして、抵抗皮膜だけ取り替えてみることにしました。しかし、露出計の指示値はほとんど改善されませんでした。
(3) 開放F値設定用の擦動抵抗を替えたのですから、CdSセルの基板も部品取りとしたESII のものと交換して改善されるか確認してみます。 部品取りのESII の擦動抵抗は、合理化前のもので、赤いリードが1本余計です。交換後も、露出計の指示値は気持ち改善されたものの、異常な指示と云わざるえません。それだけでなく、音で聞いただけでも明らかに、シャッター速度の指示値より実際のシャッターは早すぎることに気づきしました。
(4) メモリブロックの特性は、確認していなかったのですが、これが異常であることは明白です。品取りとしたESIIのものと交換して改善されるか確認してみます。 部品取りのESII のメモリブロックは、幸いにもスイッチが2連になっている新しいもので、交換可能です。しかし、これが、良品であることは未確認です。交換してみると、露出計の指示値とシャッター速度の障害はほぼ改善されました
(5) 蛇足ながら、主基板を元に戻して取り外してみるました。付いていたのは、半固定抵抗を7個搭載した新しいパターンのものです。 どうしても、スローシャッターが切れなかったオリジナルの基板だったのですが、古い基板と同じように安定してスローシャッターが切れるようになりました。
オート不良の原因もメモリブロックが主原因であったことが解りました。
(6) さらに蛇足ですが、オリジナルの主基板の場合、音で判断する限り、シャッター速度の指示値より高速ですが、部品取りした基板だと指示値に対して納得できるシャッター速度です。 これは、FETのゲート−ソースが順方向にバイアスされてしまって、電流がリークしているからです。
メモリブロックを壊した原因は、基板側にありました。このバイアスが調整できるものなのか私には不明です。従って、この主基板は使用できません。
 4.露出計不良の対処
   基板は古いタイプのものを使用することにします。従って、ほとんどの電子回路が、品取りとしたESII のものと
   替わってしまいました。メモリブロックだけ残して元に戻すよりも、このまま復旧することにしました。
   最初は、露出計の指示の狂いとオート不良は直接の関係はないと安易に考えていました。
   とにもかくにも、底フタを開けて点検した時、いくつかの項目を省略したことが、対応が迷走した要因であり、
   猛省が必要です。
対策内容 対策結果
(1)

不良要因の確認で交換した部品取りとしたESII の電子部品でそのままで復旧する。


メモリブロック

電子回路の特性・挙動は、動作は、品取りとしたESII のものになってしまったはずで、他のボディと0.5〜1絞り程度の偏差がありますが、ほぼ正常範囲になりました。
尚、メモリブロックは、樹脂で封止されているので、あえて確認しませんが、FETが劣化しゲートのリーク増大したのか、コンデンサの容量が抜けてしまったのではないかと推定されます。
新しいESII は、金メッキの省略が徹底されています。接点やコネクタのこまめな清掃というのも奏効しているようです。
程度が良いのだから、簡単だろうとタカをくくっていました。作業そのものは、2回目ということもあり、手早に進めることができましたが、行きつ戻りつしたことには替わりありません。結果として、あれこれ悩むより、効率優先で全部交換してしまうのでは、素人にあるまじき行為と反省しました。尚、この壊れたメモリブロックの補修方法の構想がまとまっているので、後日、検討結果を報告します。
オート不良とはいえ、露出計が正常な場合と、露出計の指示が狂っている場合では、原因は全く違うという好例だと思います。いずれにしろこれで、ニコイチ修理からサンコニ修理に出世できました。正常にスロシャーターが切れることを確認した時の喜びはひとしおです。

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  作成日 : 2000・12・11.
  更新日 : 2003・02・20.