作成:2002・09・27



ペンタックスME-Superの白ボディと黒ボディ


 私は、MEシリーズの小さなサイズと操作の感触に魅力を感じてME-Fを使っており、1/2000までの自動露光とマニュアルが使えるシャッターとフォーカスエイドに満足していましたが、あえてME-Superを買おうとまでは思いませんでした。
 それに、私にはME-Superを敬遠する理由がありました。プラントの設備設計の仕事をしていたころだったのですが、現地の据付指導員の使っていたのがME-Superでした。ですから、ME-Superの写真は、すなわち自分の不始末を付きつけてくる大量の証拠写真で、硬い描写の金属の溶接ビード、赤い傷口のような液体浸透試験のインディケーション、工業用ファイバースコープの画像といった仕事のトラウマが付きまとうのです。

 しかし、最近そのようなトラウマから、開放されました。チャージ不良のME-Fを修理してみると、チャージ不良やミラーアップ状態で固まっているのがウソのように動くのは快感でした。そして、それがME-Superでもジャンクとしてぞんざいに扱われているのは、見るに忍びなくなりました。
 世の中にはMEシリーズに魅せられた人々がたくさんいますが、私も仲間入りしてしまったようです。


ME-Superと交換レンズのお出かけセット。レンズ後キャップはふたつ貼り合わせてあります。


 今年の春先に秋葉原にある評判のジャンク屋さんに立ち寄って、3千円のミラーアップ状態のME-Superに手を出してしまいました。ホコリや傷などはジャンクとして扱われた期間の長いことを物語っていますが、ワインダーの接続口のキャップ以外の部品の欠品もありません。ミラーボックスを外して、例のダンパーを交換して組み立て直すと快調に動くようになりました。
 このME-Superを手入れして、ちょっと出かけてみました。レンズは、50mmF1.7、28mmF2.8、135mmF3.5です。この広角と望遠は、見かけの鮮明さを優先していて、きれいな描写を犠牲にしていますが、高感度フィルムを入れてしまえば描写なんて関係ありません。この実用的な組み合わせはたいへん軽快です。

 半年ほどして出張した帰りに、また同じ店へ寄って4千円を散財してしまいました。黒の美品のミラーアップ状態のME-Superがあったのです。電池室とワインダーの接続口のキャップもあります。これが、気持ちよく動いたときのことを想像して、一瞬、快感がよぎりました。こうなると、止まりません。
 黒のMEは少なくても2度は修理に出されており、開けるのに苦労しました。例のダンパーを交換して復活のはずだったのですが、仮組みして巻き上げてもチャージできません。よく見ると、ミラーボックスの底に摺り跡があります。レバーが0.1mmぐらい変形しており修正することでチャージ出来るようになりました。
 このME-Superも、分解して、満足のゆくまで手入れをしてみて、いっそう惚れ直したのは言うまでもありません。




 すこし、MEシリーズの魅力をおさらいしてみましょう。そもそも、オート専用のMEとマニアルのMXは1976年に発売されました。同じようなコンパクトなサイズですが、アクセサリーや部品の互換性の無さには呆れます。ME-Superは、このMEにマニュアルモードのシャッターを追加して1979年に発売されています。マニュアルシャッターの設定はアップ・ダウンボタン式で、このボタンだけ追加して、オマケのような最小限の電子回路の追加で処理しているようです。
 さらに、ME-Superは1/2000のシャッター速度が実現されました。こうなると、ME-Superは一般に受け入れ易い魅力的なカメラとなります。
 ME-Superのシャッターユニットは、セイコーMFC2000で、先幕4枚、後幕5枚の羽根で構成されています。あまり注目されていないことにですが、MFCは、レンズシャッターのように、先幕の羽根が走り、後幕の羽根が走って露光が終わると、先幕の羽根はすぐに復元してフィルムを2重に遮光するようになっています。こうして、シャッターユニットの高さを低減するための後幕5枚の採用と遮光性の確保を実現しています。シャッター単体の静粛さは布幕シャッターと大差ないレベルなのには驚きます。
 布幕シャッターのMXがボディの中にシャッターを作りこむという作り方になるのに対し、完成したシャッターユニットを組み込むだけという作り方のほうが生産性が圧倒的に優れていることは言うまでもありません。


出典:セイコー光機 北井 清「セイコーMFCシャッター」写真工業 1977年 12月号


 私は、ME-SuperもME-Fいずれも、シャッターを切った際の音やショックがマイルドなところに惹かれます。さらに、MEシリーズはレリーズボタンのトリガ感が機械的なものなのも魅力です。きめ細かな配慮なのですが、電源ONの位置とシャッターの切れるレリーズボタンの押し込み量が調節されています。ちなみに、スーパーAは明らかにME-Superの発展型ですが、内部のレリーズボタンは電磁スイッチになっていますし、デジタル液晶表示と電子化路線を着実に進み始めています。

 とにかく、チャージ不良やミラーアップ状態で固まっていたボディですが、素人の私でも清掃や一通りの手入れをすると気持ちよく使えるようになるのは、生産性に優れたMEシリーズの設計の賜物です。




シャッターの速度が本当にそろっていて同じ露光量になるかは別ですが、ME-SuperもME-Fも複数台比べてみると、見事に同じ露出を示します。露光がそろわないのは、受光・測光のずれよりも、まず、フィルム感度設定用と絞り値読み込み用の摺動抵抗を疑ったほうが良いようです。2絞りズレていたME-Fの1台は、フィルム感度設定用の摺動抵抗を清掃することで正常になりました。

MEシリーズに用いられているシャッターユニットの詳しい解説記事として、写真工業 1977年 12月号の「セイコーMFCシャッター」を紹介させて頂きます。ME用のMFCなのですが、その特徴と開発の狙いなどがよく判ります。それにだけでなく、図をふんだんに使い特許明細の実施例のように個々の部品の説明をしてその動きを解説する生真面目さには敬服します。

これで、MEシリーズはME-Fが3台、ME-Sが2台になりました。ESIIとSPを圧迫し始めています (^_^;)。トムさんは、世の中のチャージ不良のME-Superを全て買い尽くす勢いだったそうです。私は意志が弱い人間なので、抜けられるのでしょうか。






 更新日 : 2002・09・27.