作成:2002・03・17


Sマウントボディの系譜(その1)
アサヒペンタックス(AP)からSVまで


SP以前のモデルは、現在の尺度で見るとあまり実用的でないので、私はあまり興味がありません。 ・・・ 知識として、ちょっと、その祖先のことを辿ってみました。 ・・・ ただ、アサヒフレックスに至っては ・・・萌えません。

 使いやすい近代的なライカ判(36mm×24mm)の一眼レフカメラの要件は、アイレベルファインダー、クイックリターンミラー、自動絞り(ウインクリターン)とされていますが、これらが、いっぺんに実現された訳ではありません。

 ペンタプリズムの採用は、コンタックスSで1950年のことです。ペンタプリズムそのもは公知のものですが、量産することは難しく、国産カメラでは、ミランダT(1955)が最初のペンタプリズム搭載一眼レフカメラです。
 アサヒが発明したクイックリターンミラーという技術は、現在も使われているたいへん完成度の高い技術で、アサヒの場合、アサヒフレックスIIB(1954)以来クイックリターンミラーを採用しています。この技術は、通産省の指導により国内各社に提供されました。もちろん外貨獲得の担い手である、大手のカメラメーカーに競争力を付けるためでしょう。ちなみに、プラクチカにこのクイックリターンミラーが採用されたのは1964年のプラクチカVからです。

 アサヒの場合、アサヒペンタックス(AP:1957)にアイレベルのペンタプリズムを搭載し、レバー巻き上げ(当然セルフコッキング)クランク巻き戻しを採用しました。このとき、マウントはアサヒフレックスより大きなプラクチカマウントを採用しました。
 しかし、完全自動絞りの登場は、もう少し後になります。アサヒは、K(1958)で独自の半自動絞りを採用しましたが、すでに、プラクチカはFXII(1956)の一部やIV(1959)から、不完全ながら自動絞りが可能でした。これは、レリーズボタンに絞込み機構を直結しているので指を離すまで開放になりませんし、逆に露光中でも指を離すと開放になるというもののようです。
 真の意味で完全な自動絞りは1958年の「ズノーカメラ」のウインクリターンです。アサヒが完全な自動絞りを実現するのは、S3(1961)のオートタクマーからです。こうして、近代的な一眼レフカメラの要件を満たすことができました。

 1959年発売のS2からSVまでのモデルは、基本的に同じボディのバリエーションで、現在、海外で市販されている修理マニュアルも共通です。1964年にSPが登場しても、露出計のないモデルとして、海外市場向けのバリューモデルとして、なんと1968年までの9年間、改良と化粧直しをして作り続けられたのです。




No. 生産時期 国内
発売
機種名 シャッター 自動絞り カウンター 概  要 ボディ色 海外ブランド
開始 終了
1957・5
1958 1957 (AP) 2ダイアル式
1/500秒
  手動設定 ミランダT(1955)に次ぐペンタプリズム搭載の国産2番目の一眼レフ。
APは、海外コレクターの通称で、AP(ASAHI PENTAX)が、機種名として
後から通用するようになったもの。
銀・黒 Tower 26
1958・4 1959

2ダイアル式
1/500秒
  手動設定 シャッター最高速が1/500秒のKのスタンダード版。
生産数はKの1/4程度と少ない輸出モデル。国内にも少量出荷された?
外観はAPそっくり。コレクターアイテムの定番。
 
1958・5 1959 1958 2ダイアル式
1/1000秒
半自動絞 手動設定 プラクチカFXII(1956)の自動絞りとは異なる半自動絞り方式を採用。
オートタクマーを使うと半自動絞りになる。
シャッターダイアルは2軸式だが最高速が1/1000秒。
銀・黒 Tower 29
アサヒフレックスIIBから踏襲したクイックリターンミラーに加え、Pマウントの採用、ペンタプリズム搭載、レバー巻き上げクランク巻き戻しが特徴。
シャッターダイアルは2軸式で、メカニズムとしてはアサヒフレックスにペンタプリズム搭載、レバー巻き上げを追加した考えると理解しやすいですね。
しかし、アサヒフレックスと同じキャストという訳でなく新しいものだということです。
230? 1959・5 1961 1959 S2(前)
SB
1軸不回転ダイアル
1/500秒
半自動絞 手動設定 シャッターが倍数系列の1軸不回転ダイアルになる、
シャッター最高速は1/500秒。
低価格(「K」が\51,500のところ「S2」は\32,600)で投入。
銀・黒 Heiland H2
AsahiPentax H2
etc
230-2
23020
1961・4 1969
1961 S3
1軸不回転ダイアル
1/1000秒
1/500秒(一部)
完全自動絞 手動設定 完全自動絞りになり、シャッター最高速度も1/1000秒。
クリップオンメーター装着可能。
高級モデル「K」の跡目を継いだのです。
銀・黒 Heiland H3
Honeywell H3
230-4? 1961・4 1963 S1 1軸不回転ダイアル
1/500秒
完全自動絞 手動設定 シャッター最高速度を1/500秒にした、S3の廉価版。
クリップオンメーター装着可能。
輸出モデル。S2との仕様差は何なの?
銀・黒 Heiland H3
Honeywell H3
230-1? 1961・4 1963 S2(後) 1軸不回転ダイアル
1/500秒
1/1000秒(一部)
完全自動絞 自動復元式
(一部)
クリップオンメーター装着可能になったのが特徴。
さらに、フィルムカウンターが自動復元のものもあり。
1/1000秒と自動復元カウンターを兼備しなところが妙。
銀・黒 Heiland H2
Honeywell H2
AsahiPentax H2
230-3
23030
1962・7
(1964)
1964
1968
S1a 1軸不回転ダイアル
1/500秒
完全自動絞 自動復元式 シャッター最高速度を1/500秒にしたS2スーパーの
廉価版。とは云え、中身はS2スーパーと同じ。
輸出モデル。
銀・黒 Honeywell H1a
230-3
23030

1962・7
(1964)
1964
1968
1962 S2 Super
SB2
1軸不回転ダイアル
1/1000秒
完全自動絞 自動復元式 主に国内向けのモデル。(プロダクトNo.は同じ)
Superとはどこにも記載されていない。
銀・黒  
232
23200

1962・7
(1964)
1964
1968
1962 SV 1軸不回転ダイアル
1/1000秒
完全自動絞 自動復元式 S2Super/S3にセルフタイマー内蔵。
SVは、スプロケットの形状など生産時期の相違がある。
銀・黒 Honeywell H3v
シャッターが倍数系列の1軸式不回転ダイアルになったモデル。横走りフォーカルプレーンシャッターのカメラにとっては大変更です。
半自動絞りのS2とSVと以外は基本的に同じボディで、海外市場では、ラインナップを取り繕うのに1/500秒のダイアルを付けたり、カウンターを古いままとしたりと変幻自在。
さらに、SP登場の1964ごろを境に、外観をそのままにブラシアップして。SPの下位モデルとしてSL登場まで作られていました。

プロダクトNo.と生産時期は、Gerjan van Oosten :「The Ultimate ASAHI PENTAX screw mount guide 」UITGEVERIJ JANSZ(1999)による。
SLまで、プロダクトNo.は、底フタ背面右側にある打刻で確認できまる場合があります。誤り等情報をご教示下さい。
SBとSB2は、現在の防衛庁共済組合で販売された物品税免税品です。