リコーオートハーフは偉大なカメラ


 オートハーフが「ちっちゃな偉大なカメラ」であることは世間の常識というものです。
 なにしろ、写真やカメラに全く興味のない小学生のころの私でさえ、ゼンマイでどんどん撮れるこのカメラのメカニズムに魅せられたことを鮮明に覚えていました。
 もちろん、自分のものではありません。ちょっと、触らせてくれたのが、親戚の誰なのか、学校の先生だったのかさえ今は思い出せません。
 どのくらい偉大なかめらなのかは疑問と思われるむきは、リコーカメラライブラリーでプロフィールを確認すると納得できるのではないでしょうか。


このたったひとつのえくぼ(アタリ)がタマにキズ

 このオートハーフSEは、ネットオークションで「☆お宝ジャンク!!見ないと後悔!!名品"リコーオートハーフ"他盛り沢山☆」9点をまとめて4千6百十円で譲って頂いたものです。その時のお目当ては、9点の中のフジカSTFだったので、1年近く「お宝箱」に埋もれていました。このたび、怪鳥さんのおすすめもあって、脱「ESの修理」ということで、「SEの修理」にチャレンジしてみました。(←オヤジギャグです)

 いつもヤボなことを書いて恐縮ですが、カメラを修理しようとして、開放をするだけでも、部品の痛みや破損が進みます。また、組立てても元に戻らない可能性もあります。ご自分でも試してみようとされる方は、ご自分の責任で行ってください。


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教材の障害状況と対策
1. 露出計が不動
どんな強い光にかざしても、赤い露出不足マークが消えません。
ゆすってもたたいてもだめです。
メーターの抵抗を測りましたが、断線とかはしていません。
ちょっと楊子で指針を突っついてみたら、パチンという感触がして、スムースに動くようになりました。どこが引っ掛っていたのかは判然としませんが直ってしまいました。セレン光電池も数百mVぐらいの起電力は出ているようなので、各部の抵抗から判断して、精度は別としてメーターは動くはずです。

2. フィルム給送(ポルターガイスト状態)
フィルムを入れてゼンマイをチャージしてもチャージできず、どんどん、フィルムが巻き上がってしまいます。
たまにチャージできても、忘れたころにガーっという音がしてフィルムが巻き上がります。寝静まったころにガーってくると、ポルターガイスト状態かとびっくりしました。
低部のギア部分に、アルファルーブをひと吹きしたところ、まず、音が静粛になりました。ガービューンチーに変りました。
そして、フィルムを詰めて確認すると正常に巻き上げることが出来るようになっています。キツネかタヌキでもいたのでしょうが、逃げ出してしまったようです。

3. レリーズできません
分解前に考えたのは、露出計が動かないのでレリーズがロックされていたのだろうということでした。
でも、機内のメカニズムを追ってみたのですが露出計からシャッターのロックは無いようです。


丸印のところが問題のスプリング

JFC会会友たかさきさんのホームページに掲載されている機内の写真と見比べてみると、スプリングがあるべきところにありません。
きっとカバーをむいたときに落ちてるに違いありません。 ・ ・ ・ ありました。
で、つまみ上げたらカーペットに引っ掛っていてビヨーンと伸びてしまいました (涙 。
これは、ESIIのマウント部の切れたコイルバネを捨てずに取っておいたものを切って、幾つか代品を作り(しんどい)、具合のいいのを選んで付けました。2度とこのようなことにならないよう、ゴム糊で一端を固定しておきます。

あとは、配線をつないで、カバーを被せてみて ・・・ あれぇ、レリーズできません。
レリーズボタンには、回り止めのプレートがついていてその方向が間違っていました。組立て時に要注意です。
4. 清掃
外観は、ヘコミがひとつあるものの、さほど汚いものでもありません。しかし、裏フタを開けると、ゴミだらけ、カビだらけです。
ましてや、ファインダーがとても汚いのは精神衛生上よくありません。

表のカバーは、アルミのように見えますが、真ちゅう梨地仕上げにクロムメッキしたものです。ヘコミは簡単に修正できるかと思ったのですが、結構厚みがあり、修正できませんでした。
ボディ施された塗料は、裏フタのモルトプレンが当たっていた部分が劣化していてきれいになりませんでした。裏フタはけっこうきれいになりました。新しいモルトプレンを貼りました。
ストラップ金具の座金の黒塗装は、剥げがひどいのでタッチアップしました。
ファインダーは糊付けしてある低部をはがして、清掃しました。

5. その他
ケースとストラップは付いていましたが、キャップはありませんでした。 ストラップはビニルヒモなので、ウエットティッシュで拭いただけできれいになりました。でも、500円の折りたたみ傘だって、もっとマシなストラップが付いています。
黒のソフトケースもちょっと味気ないものです。ケースの中は、風化したウレタンの粉がいっぱいです。これを再生するのは諦めました。


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 私は、どう開けていいのかわからず、中の状況も判らず、ずっと手を出しかねていました。自信がない場合は、教材・部品確保用と本番用の2台を準備して着手するのですが、今回はその必要はありません。JFC会会友たかさきさんの「素人寫眞機修理工房」のオートハーフのページを精読して着手しました。機内の写真も豊富でたいへん勇気付けられます。もちろん、作業もサクサク進みました。
 今回、SEの開放のしかたは、この好適なページがあるので省略します。


自由帳
1. 最も重要なツール
オートハーフをメンテナンスするために、必須のツールです。
期限切れや、うっかり感光させてしまってオシャカにしてしまったフィルムとベロ出し(フィルムピッカー)です。
なぜ、このようなものがいるかと云うと、SEは、フィルムが正常にロードされていてはじめて、ゼンマイをチャージすることができて、フィルムカウンターが1枚目になってから、シャッターを切るとフィルムが巻き上げられるのです。このような配慮が一般的になるのは、ずっと後の巻き上げモータ内蔵のプラカメになってからです。
ちなみに、プラカメの場合、感度が自動設定の場合が多いですから、感度の違うオシャカフィルムを準備すると便利です。


2. 露出計
SEの露出計は、メータ(電流計)とセレン光電池(光起電素子)と電流変換用抵抗だけで構成されていました。
SEでは、表のカバーと本体が赤黒2本のリードでつながっていて、メンテナンスをするには不都合です。シンクロソケットの下にテープ巻きした抵抗が止められていました。黒のリードは、ここのハンダを外します。赤は、シンクロソケットの座を止めるビスで留めてボデイにアースされていますので、ここを外します。
ちなみに、メータの抵抗は1.5KΩ、抵抗は2.4KΩでした。セレン光電池の起電力は、〜0.2V強といったところでしたが、起電力を見るにはアナログテスタでは入力抵抗が無視出できないのでデジタルテスタがお奨めです。
3. フタのモルトプレン
なんとか、裏フタのモルトプレンの寸法を取りましたが、劣化したものから採寸したので1mmぐらいの誤差はあります。またSEのモルトプレン形状は、フタの接触する全面をカバーするものと、今回のSEのように、面積を節約しているものと2種類あるようです。
いずれにしろ、これをオリジナルのように1枚もので作ることは、たいへんな材料の無駄です。そこで下図のように4分割ものにして、黄色く図示した調整代を付けました。オリジナルは、ゴム糊で付けていますが、シール糊付きのモルトプレンを貼ることにします。

  




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 私は、この1台だけでは、欲求不満です。このごろは、中古カメラ屋さんのジャンク箱は、プラカメばかりです。そこで、ウェブオークションに教材を求め、オートハーフを検索してみました。

けっこう件数はあります。 ・ ・ ・ うわっ、なんですか、この値段!

 ゴキブリの巣のようなオートハーフの出品者も強気ですが、それに入札する人もいます。ノークレームノーリターンのペンタックスSPが5千円以上なら回転寿司になって何度か回ります。 ・ ・ ・ 終了まで2時間もあるのに並品以下のオートハーフSLは3万6千円です。SLでもペンタックスSLなら、美品が2台でもお釣りがきそうです。
 一眼レフのSPを圧倒する人気と高値。なんと理不尽で悲しい現実でしょう。社会の矛盾に憤慨せざる得ません。

 という訳で、次の1台、その次の1台を直して知見を増やしたいのですが、それは、諦めることにしました。そして、フィルムを詰めて早速試写してみました。
試写の結果は 
画像サイズ187KB

 趣味でカメラ修理をする方は、瀕死のジャンク品でも「命に別状はないし、くっついたんだから直った。」というところで満足する人は少ないと思います。「せめて、日常の生活に支障が無い程度の並品になるまで、頑張りましょう。」というのが大多数だと思います。そして、「キズ跡が目立たないように、できれば、この機会に、ぜーんぶ。もっときれいになりましょ。 ・ ・ ・ これで美品。(^。^)うふっ。」って欲張るのではないでしょうか。そこで、次なるメイクアップをしたいと思います。内容は ヒ ミ ツ。


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  作成日 : 2002・01・19.
  更新日 : 2002・01・20.