主なお手入れの箇所と内容

 

 実は、他人のカメラをお預かりしてお手入れするのは、今回が初めてです。お預かりしたKは、一人なのか複数なのか、履歴は判りませんが、先人によって修理が試みられた形跡がたくさんあります。純正の修理のようにきちんとしているところもあれば、めちゃくくちゃなところもあります。

 どうも、最後にトライした先人は、プロではないようです。ちょっとせっかちで、走りながら考えるタイプで、雑ですが、作業ぶりからは、けっこうな手だれとお見受けしました。

 本当は、Kのメカニズムに関する疑問点を解明するのが楽しみだったのですが、修理を試みて失敗した先人の人柄を想像することが楽しくなってしまいました。何か、憎めない新しい友達が出来たような気分でした。
 しかし、人のことは言えません。私もしでかしてしまったミスがあります。それも白状しておきます。

 とにかく、今回は、貴重な経験をさせて頂くことができました。そればかりか、部品取り用に初期型のS2も追加で送付して頂きました。今回のお手入れで確認した不具合とその対処に関して、概略をご報告をして、お礼に代えさせて頂きます。





 先人の挫折  (*^O^; ぐわははは 先人の足跡と対応

No. 状況と対応
巻き上げレバーのスプリング(ゼンマイ)が切れていました。残骸のスプリングの切れ端は巻き取り軸側に押し込んでありました。破断面に錆は無く、外力で切ったようです。

先人は、切れたスプリングをとりあえず収納してフタを閉めて代品を捜すことにしたのでしょうが、そのまま忘れてしまったようです。

このスプリングは、ほぼオリジナル同様のS3のものに交換しました。
シャッター幕が交換されていました。しかし、交換されていた幕は、他機種のもので、幅が狭く、弛んで張られているので光漏れの危険があります。このままではX接点も導通しません。

 → その取り外した幕です。

わは〜ぁ、後幕には、前板(レンズボード)のフランジバック調整用のスペーサが1枚巻き込まれていました。先人は、組み立て時に落っことしちゃったんですね。

あれ〜ぇ、後幕の通し方が違いますよ。これじゃ、レリーズボタンを離すまで先幕も後幕も走りません。

これを直すともっともらしい作動をするようになりました。

完全なKオリジナルとはできませんが、所定の幅のものを作成して交換することにしました。

スローガバナのリンクレバーが変形していました。先人は、幕の交換の時に変形させてしまったようです。 もぉ〜、これでは、後幕の連携ギアに引っ掛かりませんので、スローは効きません。
このレバーの変形を修正して、きちんと位置決めして、スローシャッターも効くようになりました。

フィルムカウンタなどのパーツ欠品がありました。
重要なパーツではないものですが、いくつかパーツが見当たりません。
よく見ると、別のところに付いています。結局、ビス1本と無くても支障のないワッシャが欠品でした。
先人は、破損した部品も、どこの部品か判らなくなったものも正直に残しておいてくれました。なんとなく、好感が持てる人ですね。
S3から移しておくことにしました。






 人のことは言えないよ  (´Д`) ウワァァァン !!! 自分の不始末と対応
No. 状況と対応
レンズからフィルム面とファインダースクリーンまでの距離の偏差が、レンズの繰り出し量で0.35mm程度あります。
これじゃ、ちょっとピンボケになっちゃいます。

マスクの厚みが0.35mmなので、フレネルレンズとマスクの順番が違うのかと思いましたが、ピント面はコンデサーレンズのマット面なので関係なさそうです。


ミラーは、60年代中ごろの(表面鏡にハードコートされていない)ものに交換されていて、Kオリジナルではないようです。
ピント位置のズレはミラーを変えたことに起因しているのでしょうか。(オリジナルは裏面鏡? 純正修理ではなさそう)

とにかく、ファインダースクリーンの調整ビスで一致させました。

そこまでは良かったのですが ・ ・ ・
さらに ・ ・ ・ ガーン ヽ(*Д*)ノ 自分もやりました。

ミラーの汚れを落すつもりで綿棒にアルコールを付けてふきふき。
汚れは落ちたのですが、あれ。あれ?
傷だらけになりました。
 → 涙;で曇ったミラー

SP-Fのミラーを左右1mm程度削って交換しました。
ちょっと傷はあるんですが、ハードコートされていている70年代のミラーですからクリアー!

ノンオリジナルだけど、これで、許してたもれ〜 (^∀^;

怪しかったのですが ・ ・ ・ ついに(その1)

妙な、金属片が作業台に残っていました。
なんだこりゃ?  ガーン ヽ(*Д*)ノ

ミラーボックスに付いている接点ですが、ぐにゃぐにゃでした。
特にFP接点が、今にも折れそうで、そっとしていたの ・ ・ ・ に。

手持ちのS2、S3とも形状が違います。
で、残骸をハンダで付けました。
先をちょっと折り曲げてから、ハンダ付けしているので丈夫です。

 → 赤丸部分ですが、ちょっと、判んないでしょ。

部品取りの最初期のS2を送って頂いたのですが、完全な互換はなく交換は断念しました。
巻き上げレバーをうまく調節すれば、フィルムカウンタが進みません。進ませようとすると、巻上げが1回では済みません。なんとか両立できるかなと思いましたが、フィルムが入ってテンションが掛かるとだめです。
原因は、目盛り板送りのツメの先が欠損しています。

フィルムカウンターをセットするときに、カウンタのセットを逆転させてしまったことが原因だと考えられます。
中古で流通しているS2、S3でもけっこう多いです。
Kではこのツメが銅合金で、いっそう折れやすいのです。

結局、ノンオリジナルになってしまいますが、このパーツを、メッキされていないS3のものに交換しました。ツメは鋼になっています。オリジナルにあわせて、ちょっと手ヤスリで加工しました。

 → 写真の左がオリジナル

そこまでは良かったのですが ・ ・ ・

このパーツはS2、S3時代になると微妙な違いの種類があり、
フィットするものを使い分けていたようです。
怪しかったのですが ・ ・ ・ ついに(その2)

この目盛り板送りは、巻き上げレバーにビス止めされているのですが、最後の1回転ぐらいしかネジが効きませんでした。
で、とうとう、スカスカになってしまいました。

あちゃーヽ(*Д*)ノ ・ ・ ・ 。

手持ちの、S2、S3ともレバーは傷だらけ。交換してもバレます。なんと言い訳をしてよいか判りません。
スカスカになったネジ穴にゴム糊をつめて固定してごまかしました。

と、白状しました ・ ・ ・ なんてヤツだと ・ ・ ・

別途、部品取りのS2をご支給頂き、カウンタの部品を移し変えてレバーを交換しました。Kはピカピカのレバーですが、S2のものはちょっと白いものです。
レバーは、S2、S3と互換性があるように見えますが、使用している4本のビスはピッチが異なります。
私は、玄人じゃないんだなぁ

ペイントやサインペンで付けたマーキング、スペーサの番号など書き込んでいます。




分解しなきゃ判んないもんね。
掃除しながら組み立てればよいのですが、またやり直しもあるかと ・ ・ ・





 結局 (*^_^*) そのまんま とか

No. 状況と対応
ペンタプリズム部側面にアタリがあり、ぽっかりと凹んでいました。 トップカバーのアタリを修正しました。
完全ではないのですが、だいぶ目立たなくすることが出来ました。掲載した写真では判らないと思いますが、現品を見るとしっかり判ります。(巻き上げ軸です)

なんにもしなかったこともあります。

アイピースのレンズのコーティングがはげています。
使用上は、別に支障はありませんが。

三脚ネジの穴の中のメッキが錆びていました。
錆落しを付けて磨きましたが、そのままです。
ネジ山もしっかりしていますので問題ありません。

フィルムメモ板のベースがひどく錆びています。
S2、S3のものは、厚みが薄いのです。
支障ないし、ノンオリジナルになっちゃうし。ごめんね。

せっかく、部品取りのS2を送って頂いたので、他に、痛み具合を見て換えられる互換性のあるパーツは ・ ・ ・ ファインダースクリーンとかテンション調整関係のパーツとか換えました。



手持ちのS2、S3のアイピースのレンズも大同小異です。そこで、別途支給して頂いた部品取りのS2のものと交換しました。

三脚座を変えればいいのですが、Kのものは、内側がつや消し塗装してあるので、オリジナルを保ちました。

オリジナルにこだわるくせに

秘密にしておこうと思ったのですが、ミラーボックスにクッションになるモルトプレンを貼りました。ただし、レンズを外しても、外からは見えません。




音にこだわちゃうんだもんね。